マリーア・ズィビラ・メーリアン 白石雄治企画立案・製作総指揮、岡田朝雄・奥本大三郎訳・佐藤亜希子英訳 鳥影社 2022年7月 185頁(B4版)32,000円+税 ISBN978-4-86265-915-6
ドイツに生まれオランダで人生のほとんどを過ごした自然学者で画家のマリーア・ズィビラ・メーリアン(1647~1717年)の名を一躍世界的にした『スリナム産昆虫変態図譜』(1705年刊行)の訳・図鑑である。初老のメーリアンが次女を連れて南米のオランダ領スリナムへ行き、2年間大変な辛苦に耐えながら灼熱の地で観察・研究した成果60点の彩色エッチングを纏めた図版に遺稿の12の図を加えたものの第3版(わが国では東京国立博物館、荒俣宏氏と白石雄治氏が所有している3部だけと言われる。
昆虫学が未だ進歩しておらず、虫けらが腐肉や排泄物から自然発生すると考えられ生長・変態を観察し、正確にスケッチしエッチングで見事な構成で描いた生物画は、昆虫学の進歩とともに評価が高まった。本書は第1~60図の解説と訳注、第61~72図の解説、ドイツの書誌学者ヘルムート・デッケルト(1913~2005年)のあとがき「芸術と学問のはざま」原注・訳注、メーリアンの年譜をも網羅し、解説には英訳も付した原書をなぞらえた44cmの大型版での完全な図鑑である。
メールアンについては、『ラテンアメリカ時報』 2022年夏号で紹介した『マリア・ジビーラ・メーリアン 蟲(むし)愛(め)ずる女(ひと) 芸術家|科学者|冒険家』 サラ・B・ポメイロ & ジェヤラニー・カチリザンビー / 『マリア・シビラ・メーリアン作品集 Butterflies』 ケイト・ハード(https://latin-america.jp/archives/53967)の既刊書もあり、併読をお薦めする。
〔桜井 敏浩〕