『砂糖のグローバル・イシュー ―植民地時代から現代まで』
田中 高 成文堂
2024年11月 218頁 5,400円+税 ISBN978-4-7923-5072-7
人類の甘味食材として日常の食生活で不可欠になっている国際商品砂糖の歴史、産業、貿易について、日本では鹿児島、沖縄県の離島や北海道、海外では米国、メキシコ、キューバ、中米、ブラジルはじめアジア等での現地調査を踏まえ、砂糖について植民地時代から現代までを纏めた画期的な解説書。
日本製糖業の現状と課題を概観から説き起こし、1960年代の日本とキューバ糖貿易、米国の対キューバ政策を述べ、中米糖業の成長をエルサルバドル、グアテマラ、ニカラグアの事例により定性・定量分析し、キューバの砂糖外交と1947年のハバナ憲章、ITO(国際貿易機関)会議に対する当時の日本外交当局の受け止め方、輸出大国キューバの退場と輸入大国日本の凋落と国際砂糖協定の変遷の軌跡を概観している。単に世界の砂糖産業を俯瞰してその歴史を述べたものではなく、砂糖の世界的な動き、カリブ等三角貿易の歴史分析、精糖業をめぐる国際関係までを網羅した意欲作。著者は国際関係論、中米地域研究者の中部大学教授。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2024/25年冬号(No.1449)より〕