『ベリーズを知るための60章(エリア・スタディーズ 212)』
国本伊代、木下雅夫編著 明石書店
2024年9月 307頁 2,000円+税 ISBN978-4-7503-5836-9
中南米にかなり詳しい読者でも、ユカタン半島の付け根にあり、英領ホンジュラスの名で英国の植民地の時代が続き、1836年に中米諸国連合が分裂しそれぞれ独立国家になった際にはグアテマラが自国領土にベリーズ地域を含むことを宣言して以来長くグアテマラと国境線の画定、領有権をめぐって係争が続いたが、1981年の国連総会で独立が承認されたベリーゼの実情を知る人は少ない。中米地域では珍しく英語を公用語とするベリーズはマヤ文明の遺跡も多く、マヤ系やカリブ発祥のガリフナ、コロンブスの到達以降来訪した欧州、アフリカ、インド系など多民族が入り混じった社会でのアイデンティティを形成している。後発独立国だが漁業、観光産業、日本でも知られるようになってきたハバネロソース等の小国ならではの小回りを活かした加工食品産業が発展していること、さらにグローバル化の中での旧宗主国英国、カリブ共同体、中米統合機構との関係、台湾との外交関係の維持、技術協力を中心にきめ細かい協力支援を続け2015年に大使館を開設した日本との関係にも言及している。
本書はJICA青年海外協力隊員として現地に赴き現在も現地に滞在している人たちや中米カリブ研究者等12人が結集して纏めた、情報の乏しいベリーズの総合的解説書。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2024/25年冬号(No.1449)より〕