『世界を支配するアリの生存戦略』 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『世界を支配するアリの生存戦略』


『世界を支配するアリの生存戦略』
砂村 栄力 文藝春秋(文春新書)
2024年8月 251頁 1,050円+税 ISBN 978-4-16-661466-0

 日本にも到来している外来のアルゼンチンアリは、普通のアリの巣が独立したコロニーとなっているのに対し数百、数千km規模に及ぶスーパーコロニーを作る社会性昆虫であり、社会性の進化によって驚異的な繁殖力をもつ。毒針をもつヒアリは亜熱帯気候を好むがアルゼンチンアリは温帯性を好み広く生存できる。
本書はアルゼンチンアリの生態・駆除の研究で博士号を取得した昆虫学者であり、住友化学での殺虫剤研究を経て国立森林総合研究所で害虫駆除研究に従事してきた著者が、ヒアリ、アルゼンチンアリ等の代表的外来種それぞれの侵入状況や危険性を紹介し、アリが社会性を進化させて生態系の成功者となり、その一部がスーパーコロニーやその他生態を進化させ侵略的外来種として世界を席巻するに至った軌跡、アルゼンチンアリが大陸を越えて日本にも攻め込んでいる実態を解説し、外来アリに対抗する方法、有効な薬剤など外来アリ駆除に対しサステイナブルな処方箋を提示している。これに著者のアルゼンチンアリを追って原産地の南米パラナ川流域アルゼンチン、大西洋のマディラ島、ポルトガル、フランス、米国のカリフォルニア、フロリダ、ハワイ、オーストラリア、南アフリカを旅した実見記録もあって、人類に匹敵する社会を構築し、世界各地での生活、生態系、農業等産業を脅かす外来アリの脅威を分かり易く説いている。

〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2024/25年冬号(No.1449)より〕