『世界の中華料理 -World Chinese Dishes の文化人類学』 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『世界の中華料理 -World Chinese Dishes の文化人類学』


川口 幸太編 2024年11月 昭和堂 2,600円+税 291頁 ISBN978-4-8122-2322-2

 

世界各地どこへ行っても中華料理店があるが、それぞれの地で定着し現地の人たちの味覚に沿った町中華と敢えて現地化せず本場流を再現したガチ中華がある。世界中で両方が合わせ食べられているのは中華料理店だけなのは何故か?を現地に精通した人類学者が東アジア、東南・南アジア、中東・アフリカ、ヨーロッパ、南北アメリカの17か国について報告したものである。うちラテンアメリカからは「グアテマラ-混淆を受容の国にみる北米と「チノ」」(東北大学大学院博士課程修了。216~229頁)と「ペルー-街にとけこみ、あふれるチーファ」(山本 睦山形大学准教授。230~246頁)が取り上げられている。

グアテマラへの広東を主とする中華系移民は1880~1930年にかけて第一波が入国したが、国人口に占める数は少ない。中華料理店では香りや辛さの刺激を抑えた現地の普段食に合わせているが、食材の入手難もあり中流の裕福な層を相手にしているアメリカン中華の倍エーションだという。ペルーでは1849年以降、クーリー(苦力)として入り、今多くの街には「chifa」

と看板を出す中華料理店が目につきリマにはチャイナタウンもある。必ずしも高級志向ではなく、ワンタン揚げ、アロス・チャウファ(炒飯)、タヤリン・サルタード(焼きそば)等はペルーの人びとに人気があり、村の食堂や家庭でも食されている。既存のチーファや中国料理とも異なり、ペルー料理も取り入れた新たなフージョン料理が創造される可能性があると指摘している。

〔桜井 敏浩〕