『考古学者だけど、発掘が出来ません。多忙すぎる日常』
青山 和夫、大城 道則、角道 亮介 ポプラ社
2025年2月 256頁 1,600円+税 ISBN978-4-591-18406-6
本書はメソアメリカ、エジプト、中国の考古学の研究者が語る考古学者の日常の研究と生活の実態。厳しい環境・条件の中で古代の遺跡をこつこつと掘り、発見した遺物を研究するのが考古学者だと漠然と思われてきたが、マヤ文明(青山茨城大学教授が担当)の密林に埋もれた遺跡を空中からのレーザー照射で三次元の地図を作成して見つけたり、出土した石器の使用痕を電子顕微鏡で丹念に仕分け、分析するなど、最新のテクノロジーを駆使している。それら高額の機材を購入し、異なる専門分野の研究者等と組んでチームを作り、そのために科研費などの研究資金申請を工夫し確保に努める、論文や解説書を執筆することも怠らない考古学者の凄まじき実態が率直かついきいきと書かれていて、学者の世界で実績を積み重ねることで評価され、現地や欧米等の研究者とのネットワークを構築に努めている姿も知ることができる、希有な語り口の発掘の裏話は痛快である。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2025年春号(No.1450)より〕