『アクティブラーニング 多文化の共生社会を創る ―ラテンアメリカの問題から探る』石黒 馨、福間 真央、額田 有美編著 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『アクティブラーニング 多文化の共生社会を創る ―ラテンアメリカの問題から探る』石黒 馨、福間 真央、額田 有美編著


『アクティブラーニング 多文化の共生社会を創る ―ラテンアメリカの問題から探る』
石黒 馨、福間 真央、額田 有美編著 晃洋書房
2025年2月 183頁 2,400円+税 ISBN978-4-7710-3904-9

 本書はラテンアメリカの経験を通じて、先住民、黒人、移民等の多文化(多民族)の共生社会を創るうえでの課題を探るため、学生が積極的に参加する学習教材として編まれた。支配層による同化主義、マイノリティの権利を認める多文化主義、さらに民族間の差異を認め尊重する多民族の共生は、差異を強調し過ぎると民族差別や紛争の契機となる。
 「第Ⅰ部 多文化の共生に向けて」では、日系ブラジル人は日本社会に包摂されているかについての考察(子どもたちの教育問題から)、メキシコ先住民のフィエスタを通じた人間関係、チリの公的医療で提供される先住民医療、「第Ⅱ、Ⅲ部 多文化主義の推進」では、メキシコのサパティスタの武装蜂起、アマゾンの開発への国家との衝突、先住民のコミュニティ参加型ツーリズムと沖縄日系移民の生存戦略、「第Ⅳ部 同化主義からの決別」ではブラジルでの黒人差別、ウルグアイで消された先住民、米国におけるメキシコ系移民の排除を論じているが、それぞれ重い課題に挑んでいる一読に値する論考集。 

〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2025年春号(No.1450)より〕