『不平等のコスト ―ラテンアメリカから世界への教訓と警告』
ディエゴ・サンチェス=アンコチェア 谷 洋之、内山 直子訳 東京外国語大学出版会
2025年3月 352頁 3,000円+税 ISBN978-4-910635-14-9
今世界各地で拡大している不平等は大きなコストとなって経済成長を阻み、民主主義制度を弱体化させ社会的紐帯を破壊するとともに、暴力や社会的不信を蔓延させ、それが不平等を一層悪化させる、すなわち格差拡大を永続化するという悪循環に陥らせることは、ラテンアメリカにおいて最も顕著である。本書はこれらそれぞれの問題点を指摘し、どうしたらこのくびきから脱出することができるかという問題を解消するには、民主主義の下で適切な政治と政策が行われることが肝要と結論している。
著者は中米を中心とするラテンアメリカ政治経済学を専門とする、英オクスフォード大学教授。ラテンアメリカの宿痾というべき不平等の弊害の要因を解明し、そこから抜け出すための変革の道筋を説いた、内容の濃い研究書である。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2025年春号(No.1450)より〕