『完訳 ビーグル号航海記 上・下』  チャールズ・ダーウィン | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『完訳 ビーグル号航海記 上・下』  チャールズ・ダーウィン


チャールズ・ダーウィン 荒俣宏訳 平凡社(平凡社ライブラリー 908・973) 2024年8月・9月 503・543頁 各2,000円+税 ISBN978-4-582-76908-1・978-4-582-76973-9

 

本書は『種の起源』(1859年)等を著わし卓越した博物学者と言われるようになったダーウィンによる『海軍大佐フィッツロイ艦長指揮、英国海軍軍艦ビーグル号による世界周遊中に訪れた諸国の自然誌ならびに地質学に関する調査紀要』(1845年刊)の完訳。本書は2013年6月に平凡社から単行本として刊行されたものの改訂増補文庫版。

22歳の少壮博物学者ダーウィンが英国を発ち南米東沿岸のバイヤから南下、リオデジャネイロ、ブエノスアイレス、パタゴニア、フォークランド諸島、南米最南端のフエゴ島、マゼラン海峡を通過するまでが上巻、南米西岸を北上してチリのチロエ島、ペルーのカヤオ港、ガラパゴス諸島、タヒチ、ニュージーランド、オーストラリアのシドニー、喜望峰を回り、英国のプリマス港に帰着するまで(下巻)の5年間(1831~36年)の世界一周記だが、各所で『種の起源』等の考察に繋がる景観、自然、地質、人文の詳細な観察が記された、現在になお読み応えある優れた記録であることが分かる。

〔桜井 敏浩〕