『鉄道史大辞典』  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『鉄道史大辞典』 


老川 慶喜・小野田 滋・柿崎 一郎・高嶋 修一・ばん澤 歩・渡邉 恵一編 朝倉書店 2024年11月 493頁 16,000円+税 ISBN978-4-254-50037-0

 

日本および海外主要地域・国の鉄道史を網羅した、文字通りの大辞典。日本の幕末から戦後の国有鉄道を中心に地下鉄、モノレール、新交通システム、分離後のJR各社と大手私鉄15社の鉄道史の後、欧米、アフリカ・ラテンアメリカ、アジア・オセアニアの海外鉄道史と技術史、事項・人名索引により概説している。

ラテンアメリカ鉄道史(今井圭子上智大学名誉教授)、国土開発と鉄道-ブラジルの事例(丸山浩明立教大学)、中南米鉄道史(さかぐちとおる ラテンアメリカ等鉄道著述 ※)、およびコラム ボリビアの鉄道乗車記(さかぐちとおる)が316~329頁に記載されている。ラテンアメリカでは資源開発の呼び水として鉄道が敷設されたが、多くの鉄道は道路網の発達などで縮小・廃線を余儀なくされて再建策を模索されていること、ブラジルでも農産物輸出のために建設が盛んになり、国防・外交政策、アマゾン河や西部開発への配慮での整備が進められ、その建設のためには日本人移民を含む労働力が動員されたが、サンパウロ州からボリビア国境へ向かうノロエステ線建設のために集結した沖縄系が建設後もカンポグランデに留まりブラジル最大の沖縄系人の集住地になった。その他メキシコ、キューバ、ボリビア、アルゼンチンの鉄道についても紹介されており、少ない紙数ながらこの地域・国々の鉄道の歴史と現在に至る動向を知ることができる。

〔桜井 敏浩〕

※『ラテンアメリカ鉄道の旅 −情熱の地を走る列車に乗って』(彩流社 2013年 https://latin-america.jp/archives/5963 )の著書がある。