『SDGs、変革、質の高い成長』  細野 昭雄 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『SDGs、変革、質の高い成長』  細野 昭雄


細野 昭雄 国際協力機構(JICA)緒方貞子平和開発研究所 2025年3月 293頁 頒布品 ISBN978-4-86357-112-9 (同研究所Webサイトからダウンロードすることができる。https://www.jica.go.jp/jica_ri/publication/booksandreports/1565783_21881.html

 

本書はJICA研究所の研究プロジェクト「質の高い成長」の最終成果であり、質の高い成長の包摂性、持続可能性、強靱性といった本質的属性、変革と質の高い成長との関係について考察し、著者の国際協力の経験に基づいて、それらを実現するための戦略、アプローチについて論じた、2022年に発刊された英文版の日本語版である。

著者は、元筑波大学教授、ECLAC(国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)、駐エルサルバドル大使、同研究所所長などを歴任し、現在は同研究所シニア・リサーチ・アドバイザー。

本書では、わが国の開発途上国への開発協力のアジア、アフリカ、ラテンアメリカでの事例を分析することで、「質の高い成長」を実現するための方法論を検討するものであり、ラテンアメリカからは中米での理科・数学教育の質向上プログラム(35~37頁)、メキシコの自動車産業の裾野拡大を通じた中小企業のGVCs参加アプローチ(56~58頁)、セラード農業開発(58~59、95~101、248~250頁)、パラグアイの胡麻バリューチェーン(61~62頁)、チリの鮭養殖・加工産業(108~113、250~252頁)、コロンビアのメデジンでの土地区画整理(229~232頁)、グリーン・エコノミー強化のためのアマゾン熱帯雨林におけるアグロフォレストリー(242~245頁)と焼畑農業から持続可能な農業を目指すパナマ運河流域保全(245~247頁)、衛星画像を使ったアマゾン河流域での熱帯林早期警戒システム(252~254頁)中米での災害リスク管理のためのBOSAI(防災)プロジェクト(264~265、267~268頁)、低所得者層のための低コスト耐震住宅・減災プロジェクト、地上波デジタル放送による緊急放送システム、起震車による防災訓練、チリとの津波警報等をはじめとした中南米防災人材育成拠点支援Kizunaプロジェクト(269~278頁)などの事例は具体的であり、様々なラテンアメリカでの開発協力の実態を知ることで開発協力目的の意図を理解することができる。

〔桜井 敏浩〕