連載エッセイ479:田所清克「ブラジル雑感」その66 私の選んだブラジル名曲集① | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ479:田所清克「ブラジル雑感」その66 私の選んだブラジル名曲集①


連載エッセイ479

ブラジル雑感 その66
私の選んだブラジルの名曲集 その2

執筆者:田所清克(京都外国語大学名誉教授)

秋を愛するCélia Ribas Andradeさんの美しい詩
A bela poesia da Sra.Célia Ribas Andrade que ama Setembro

 フェイスブックを見ていたら、アンドゥラーデさんの素敵な詩に遭遇した。彼女はむろん、多くのブラジル人にとって九月は、最高の月なんだろう。
 この月は日本では早春の季節に当たり、さまざまな花がそこかしこに咲き乱れる、美しい時期であるかもしれない。
 待ち望む春の到来に私は欣喜雀躍したが、もう晩春から初夏のシーズンに季節は移ろい始めている。日本とは季節はずれの詩であるが、詩想そのものが心に訴えるものがうるので、紹介したい。
Como eu amo Setembro!
Chega a primavera
contente, brilhante,
levando embora
o desgosto
de agosto,
deixando no ar
a certeza,
a beleza.
Setembro!
mês das flores,
dos amores,
dos cheiros,
das cores.
Como amo setembro!
da infância, me lembro
da cidade onde nasci
e muitos sonhos vivi
sempre em setembro
bem me lembro.
Lá floresce o ipê roxo, amarelo
suas flores forram a praça,
o jardim.
Ah!nessa época
também floresce o jasmim.
Como eu adoro
setembro!
É um mês de muita poesia,
de risos , de fantasias.
Setembro!
mês das flores,
dos amores,
de lembrança
de criança.
Ah!muitos setembros
passaram agora só me resta esperar
Outro setembro voltar…
私は九月を何と愛していることか!
嫌いな8月を連れ去り、
確かさと美と清らかさを空中に感じさせながら、
嬉しい輝く春来たり。
九月!
花々の、
愛の、
香りの、
色彩の月なり。
私は何と九月を愛していることか!
幼少時代を、
生まれた街を私は覚えている。
そして私はいつもあまたの夢をみて生きたいたのをよく覚えている。
紫色と黄色のイペーが花咲き、
その花は広場や庭園を覆っている。
あぁ!その時期には
ジャスミンもまた花開く。
私は何と九月が大好きなのか!
笑いとファンタジーの
あまたの詩の月である。
九月!
花の、
愛の、
想い出の
幼少の時代の月。
あぁ!多くの九月が
<私の人生のオーロラ>を通り過ぎたことであろうか。
今、まだこれから期待するのは、
別の九月が帰ってくること…

サンバ・カンサオンの典型: 「探し歩いて」
Bom exemplo de Samba Canção:Ronda

 作曲家で動物学者でもあるパウロ・ヴァンゾリーニのレパートリーのなかでは、主たる楽曲、それもサンバ・カンサオンである。
 歌詞を見ると明らかのように、失恋した孤独な女が、心が引き裂かれる思いで、愛する人を疲れを忘れて必死になって街中を探し回る。が、探し出せず、失意のうちに絶望して家路に着くのである。
 他の女たちと飲みながら、ビリヤードやサイコロに興じる彼に対して彼女は、並々ならぬ焼き餅[com dor de cotovelo]を焼き、痛苦を覚える。
 大大円は、そんな愛する人が、サンパウロの社交空間として名高き大通りで、血まみれになっているシーンを報じる新聞記事で終わる。
Ronda
por Paulo Vanzolini
De noite eu rondo a cidade
A te procurar sem encontrar.
No meio de olhares espio,
Em todos os bares você
não está…
Volto prá casa abatida,
Desencantada da vida.
O sonho alegria me diria
me dá:
Nele você está.
Ah!Se eu tivesse
Quem bem me quisesse,
Esse alguém me diria:
.
Eu não desistia.
Porém, com perfeita paciencia
Volto a te buscar.
Hei de encontrar
Bebendo com outras mulheres,
Rolando um dadinhos, jogando bilhar
E nesse dia, então,
Vai dar na primeira edição:
Cena de sangue num bar
da Avenida São João.

探し歩いて  パウロ・ヴァンゾローニ作詞、作曲
夜、あたしは街を歩き回る
見つからないあなたを探し求めて
人の視線の中で窺う。
どの居酒屋にもあなたは居やしない
人生に幻滅し
落ち込んであたしは家に帰る
夢はあたしに喜びを授けてくれる
その夢の中にあなたがいる
あぁ!もしあなたに愛する人がいたら
その人はあたしに言うだろう
[無駄な人探しはやめなさい]、と
あたしは諦めなんかはしないわ。
けれど、十分耐え忍んで
再びあなたを探し、見つけ出すつもりなの
他の女の人と飲みながら
サイコロを転がし、玉突きをしているあなた
で、その日には
新聞の初版に
サン・ジョアン大通りの
とある居酒屋での、血の光景が載るの

僕の好きな女(ひと) ディジャヴァン
Meu Bem Querer  Djavan

 1998〜1999年にかけて、TV Globo のテレビ小説の主題歌になり、話題をさらった曲。
 Meu bem querer
 É segredo, é sagrado
 Está sacramentado
 Em meu coração
 Meu bem querer
 Temum de pecado
 Acariciado pela emoção
 Meu bem querer, meu encanto
 Tó sofrendo tanto, amor
 E o que é o sofrer
 Para mim que estou
 Jurado para morrer de amor
僕の好きな女
  僕の好きな女
  秘密で聖なる
  僕の心の中に
  聖別された女
  僕の好きな女
  情動によって慈しまれ
  何がしかの過ちを有した
  僕の好きな女
  僕はそれほどまでに
     悩み苦しむ愛  
  そして死ぬほどに誓う
  その愛こそ心の痛み
  僕にとって

君の瞳の輝きで ヴィニシウス・デ・モラエス作詞
Pels Luz dos Olhos Teus Vinicius de Moraes

 通常Vinicius de Moraesとして知られているMarcus Vinícius da Cruz de Mello [1913〜1980]は、詩人であるばかりか、外交官、劇作家、ジャーナリスト、作曲家、歌手などその多才ぶりで驚かされる。
 が、何と言っても最大の才能を発揮したのはおそらく、抒情詩の領域かもしれない。
 愛煙家にしてウイスキーをこよなく愛した彼は、ボエミアンとしても知られ、外交官も不品行で首になったといわれている。
 Vinicius de Moraes の、時には官能的な詩が私は大好きで、いくつか日本語に訳したりもしている。
 片や、Antônio Carlos Brasileiro de Almeida
[1927〜1994]もTom Jobim の名で知られ、周知のごとく、ブラジル音楽を代表する存在であり、bossa novaを国際化した人物でもあった。
 この二人の巡り合わせによるコラボレーションによって、この名曲は誕生したといつてもよかろう。
Pela Luz Dos Olhos Teus
Quando a luz dos olhos
meus /
E a luz dos olhos teus
Resolvem se encontrar
Aí que bom que isso é meu Deus
Que frio que me dá
O encontro desse olhar
Mas se a luz dos olhos teus/
Resiste aos olhos meus
Só prá me provocar
Meu amor juro por Deus
Me sinto incediar
Meu amor juro por Deus
Que a luz dos olhos meus
Sem mais lara
Pelo luz dos olhos teus
Eu acho meu amor
E só se pode achar
Que a luz dos olhos meus
Precisa se casar
君の瞳の輝きで
僕の瞳の輝きと
君の瞳の輝きとが
出逢うのを決めた時
あぁ、なんて素敵なんだろう/
視線が合うと
僕をぞくぞくさせる
しかし、もし君の瞳の輝きが/
僕の瞳に抗えば
それは僕を挑発するためにのみある/
愛する女(ひと)よ、僕は神に誓う/
燃え上がるのを感じると
愛する女よ、僕は神に誓う/
僕の瞳の輝きは
もう待てない、と
僕の瞳の輝きが
言わずもがな
君の瞳の輝きの中にあって欲しい/
君の瞳の輝きによって
僕は自分の愛を見出す
そして、ただ考えられ得るのは/
僕の瞳の輝きが
結び合うべきこと