『ラテンアメリカをめぐるグローバル経済圏 ―「潮と風」と帆船によるポルトガル・スペインのネットワーク』
住田 育法・牛島 万編著 明石書店
2025年3月 269頁 3,200円+税 ISBN974-7503-5926-7
16世紀から17世紀にかけてポルトガル、スペインはじめ欧州の船乗りは潮と風を利用して大洋を航海し、キリスト教の宣教に努めるとともに列強は植民地を拡げ重商主義政策を中心にした地球規模のネットワークを構築した。
本書はラテンアメリカを舞台とするグローバル経済圏の原型がどのように現代のものに包摂されていくのかについての具体的プロセスを考察したもの。第1部「潮と風の歴史と社会」では航海の科学技術やコロンブスの習得知識から始まり、既にあった日本人を含む奴隷貿易、ポルトガルのアマゾン支配、日本人漂流民の記録からみたメキシコ銀を取り上げ、第2部「潮と風の歴史の周辺」ではコラム5本で大航海時代の主役ポルトガルの形成、食人伝説、マヤを例にした先住民の主体性とマヤ・スペイン王族の関係、アステカとインカ古代文明に挟まれた中米の考古学的課題、19世紀幕末の日本人漂流民の軌跡と諸外国との交渉への貢献など多岐にわたる切り口から述べている。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2025年夏号(No.1451)より〕