『結婚式』
ネルソン・ロドリゲス 旦 敬介訳 国書刊行会
2025年2月 466頁 2,900円+税 ISBN978-4-336-07708-0
ブラジルのジャーナリスト、劇作家ロドリゲス(1912~1980)による長編小説。上流中産階級の同性愛、貞淑な女性たちの背後に隠された欲望、洗練されたボサノヴァが流行する中で若者文化が開花し行動も価値観も大きく変化している1960年代のリオデジャネイロを舞台に急速に崩壊しつつある社会、上流階級の精神的腐敗を描いたため、1966年の出版直後に当時の軍事政権から「不道徳な内容と下品なことば使い」で家庭の秩序を乱すと販売禁止になったが、訴訟によって翌年解禁された。饒舌な会話が交わされているが、実は言いたいことを言えない、面と向かって言わずに曖昧にし実際はやり過ごす特に中上流社会に多くあるという側面も窺わせる。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2025年夏号(No.1451)より〕