『一冊でわかるメキシコ史(世界と日本がわかる国ぐにの歴史)』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『一冊でわかるメキシコ史(世界と日本がわかる国ぐにの歴史)』


『一冊でわかるメキシコ史(世界と日本がわかる国ぐにの歴史)』
国本 伊代監修 河出書房新社
2025年5月 207頁 1,800円+税 ISBN978-4-309-811225-3

ブラジルを含む「世界と日本がわかる国ぐにの歴史」シリーズの25冊目。古代オルメカ、マヤ文明、アステカ文明から始め、スペイン人による征服と支配、独立前夜とメキシコ共和国への時代、メキシコ革命の混乱の時代を経て、カルデナスによる大規模な農地改革、鉄道・石油の国有化、第二次大戦後のメキシコの奇跡と言われる高度成長期、工業化の推進があったが、1968年のメキシコ・オリンピック時には反対する学生の虐殺があった。1980年代には原油価格の下落もあって史上最大の金融危機に見舞われ、民営化など新自由主義経済体制への移行を軸にした経済再建を図ったが、メキシコ市大震災、1994年のNAFTAの発効と時を同じくしたサパティスタの蜂起、さらにまたしてもの金融危機によりPRIへの支持率は低下して、2000年の大統領選挙でのフォックスの勝利により初めて野党に転落した。この頃から現在に至るまで麻薬犯罪組織との抗争と治安の悪化が顕著になった。そして2018年の選挙では国家再生運動のロペス=オブラドール元メキシコ市長が当選、2024年にはその後継者シェインバウムが初の女性大統領に就任したが、2025年1月に米国でトランプ政権が発足すると貿易、メキシコとの国境からの不法移民や麻薬・合成麻薬流入等をめぐって厳しい外交交渉を行っている現在に至るまで、分かりやすく簡潔に解説している。

〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2025年夏号(No.1451)より〕