執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)
今回の参院選ではひたすらバラマキ戦略が語られていましたが、債務残高に関する議論はほぼ無視された形で取り残されています。パラグアイでは金曜日ABC Color紙が「公的債務が過去3年間に4倍に膨らんだことを問題視した記事を掲載しています。
https://www.abc.com.py/negocios/2025/08/07/deuda-publica-nacional-paso-del-108-al-41-en-13-anos/
石破首相が二カ月前に「日本の状況はギリシャより悪い」と発言したことが逆に問題視されましたが、この首相発言は以下の表でも示されている通り、本当に悪いのです。ラテンアメリカ最富裕国から世界最貧国に転落したベネズエラすら抑えて堂々の世界第二位。
https://www.sankei.com/article/20250609-XAKLOD7MNRIL3HXP7IJLRYS7B4/

ご覧の通り、パラグアイは債務残高の管理という観点では世界では極めて健全な状態を保っているにもかかわらず、債務の増加を非難する記事が大きく取り上げられているわけです。ちなみにその記事に掲載されている南米各国の状況は以下の通り。

最悪のアルゼンチンがミレイ改革で大幅に改善していることや、パラグアイがグアテマラやペルーに次いで健全な状態であることがわかるものの、パラグアイでは2023年対比で2024年の実績が悪化しているということを示しています。
日本の国債発行残高は以下のグラフの通り、右肩上がりで増大しており、紙幣を印刷すれば済むという理屈はアルゼンチンやベネズエラが通ってきた道をなぞる不毛の政策なので、いまこそ国民こぞって議論すべき大きな問題として取り上げてもらいたいものです。

財政の健全性維持に向けて国民が高い意識を保つパラグアイと、債務不履行の先進国であるアルゼンチンやベネズエラの後を追う日本、夏休みの課題として真剣に考慮してほしいものです。
今週金曜日は首都アスンシオンの建設488年記念日、これを祝うパレードが大統領府Palacio de Lopez裏の河岸道路で盛大に行われました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%AA%E3%83%B3
パレードの動画は以下の大統領府公式Xでご覧ください。
https://x.com/presidenciapy/status/1956363671036162393?s=51
写真版は新聞La Nacionの電子版でご覧になれます。
https://www.lanacion.com.py/ojo/2025/08/15/asu488-gran-desfile-militar/
このパレード映像で他国では見られないいでたちで行進したのが陸軍特殊部隊の野戦兵たちです。

何かの仮装大会の行進のようにも見えますが、国土の多くの部分が緑に覆われた林野であるパラグアイでは、敵に気づかれないように行動する必要があるために、このように一見コミカルな格好で野戦に臨むことが多いようです。日中の最高気温が20℃台中ほどの真冬の行事なので良いですが、これを真夏にやるとなると大変そうです。
その様子を娯楽映画にしたLEALという作品があります。
https://www.youtube.com/watch?v=tPSLRgKpF_Q
この作品はNetflixでも視聴できますので、是非ご覧ください。
この記念日の前日木曜日の朝6時20分頃から全国規模の停電が発生し、夜明け前の暗い道路で交通信号がマヒする事態が発生し、首都圏をはじめ全国各地で朝の通勤ラッシュ時に交通渋滞が発生しました。
そんな中、路上で物販業を営む男性が、急遽交通整理の手伝いをして渋滞緩和に貢献したという記事が取り上げられました。
映像を見ると道路が真っ暗なのがわかりますが、これは今年から冬時間と夏時間の切り替えをやめたために冬場の日の出時間が7時過ぎとなったため、登校や出勤時間でも暗闇という期間が長く続いています。
停電は1時間ほどで収束しましたが、成長著しいパラグアイでも比較的頻繁に発生する停電は成長の妨げとなるので、一刻も早く問題を解決したいものです。
アラスカでは米ロ首脳会談が予想通りの形式だけで執り行われ、ウクライナもガザも変わらない窮状に置かれていますが、一日も早く世界に平和が来ることを祈る終戦記念日となりました。
昨年8月は格付け会社ムーディーズがパラグアイの投資適格性の判断基準となる国債格付けを投資適格級となるBaa3に引き上げて話題になりました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-18/SID136T1UM0W00
今回、ムーディースはこの判断の見直しを行い、引き続き同じ格付けを維持する方針を発表、パラグアイ経済の成長性について継続的にお墨付きが与えられました。
さらに昨日の報道ではIMFや世界銀行が南米諸国の中でパラグアイはアルゼンチンに次ぐ成長率を示すであろうと予測したと報じられました。
こうした前向きな経済指標を基に、ペニャ大統領は年間12万5千人の新規雇用を期待する声明を発表しました。

総人口700万人で若年人口比率が高いパラグアイにおいて、年間125千人もの雇用が増えるということは、労働力人口400万人と仮定すると年率3%で求人率も増えるわけで、今後外国うから質の高い工業資本が流入してくると、労働者側にもそれに呼応した高い水準の知識や経験が求められることになるわけで、教育の質の向上は益々重要な課題になってきます。
先週は停電のニュースをお伝えしましたが、新たな投資を呼び込むためには質の高いインフラの提供もまた極めて重要な条件になります。発電会社であるイタイプ発電所から配電会社であるANDE公社への供給価格に問題あり、と指摘する記事も掲載されましたが、停電をなくすには配電事業の質の向上も喫緊の課題であり、こうした問題を解決することも大切です。
パラグアイ国内では大きくは報じられていないものの、当地在住のブラジルが今週の重要ニュースとして教えてくれたのが、米国政府によるパラグアイ政府への犯罪取締強化支援対策の施行です。
これは、ブラジル国境に近いエステ市でアラブ系テロリストの活動を監視するというもので、エステ市経済を牛耳るアラブ系市民の多くは、米国の指示を受けてアラブ系の住民への監視が強化されるのではないか?との懸念を持つ人たちも多くいるようです。
ところで読者の皆さんは自動車ラリーについてご存じでしょうか?
専用の自動車競技用サーキットを使って高度に特殊化された競争専用車両で競争をするのがレース、一方市販車に改造を加えた車輛で公道や道路のない地域を走って時間を競うのがラリーです。ラリーは世界各地で開催されていますが、その頂点ともいえる大会が世界ラリー選手権=WRC=ワールド・ラリー・チャンピオンシップ大会で、世界各地で開催されるのですが、来週木曜日から日曜日にかけて、パラグアイ南部エンカルナシオン周辺で開催されることになっています。
https://toyotagazooracing.com/jp/wrc/report/2025/10/
11月には日本でも開催されますので大いに盛り上がると思いますが、その予習のためにもパラグアイでの競技にも是非ご注目ください。
https://www.as-web.jp/rally/1241750#google_vignette
今週はベネズエラのマドゥロ氏を国家元首ではなく麻薬取引の首領と認定した米政府が多数の軍艦を動員してベネズエラへの威嚇行動を起こし、ベネズエラ国内では急遽志願兵の募集が行われ、緊張が高まっています。
El amago de intervención militar contra el narco dispara la tensión entre EE UU y Venezuela(麻薬組織に対する軍事介入の兆候が米国とベネズエラの緊張感を高めている) https://jp.reuters.com/markets/commodities/UAR5ZN4LRZJYDEDEOOULJSIKZI-2025-08-28/

ベネズエラはチャベスが政権を握った1999年2月以降、社会主義という名の国体破壊が続けられ、2013年のチャベス氏の死後も不正な選挙操作によって”選出”されたマドゥロ自称大統領が政権の座に居座り続けていますが、石油や鉄鉱石・アルミ・石炭といった鉱物資源を製品化するための設備の運営が長期間にわたって技術素人の軍人達への恩賞として委ねられた結果、産業は壊滅状態に陥り、多くの優秀な人材が国外に流出しています。
反対派のリーダーであるマチャド女史は、民主化を求めてメッセージを発信し続けています。 María Corina Machado en X: “¡Esta es la Venezuela que viene! Aquí puedes ver, en sólo 4 minutos, el sueño de millones de ciudadanos que ya estamos listos para el retorno de la democracia y un auge económico y social nunca antes visto en la historia de nuestro país. La Transición ya empezó. Te https://t.co/7K5VykhE1B” / X
今回の米海軍による威嚇行動は、ベネズエラ国内の民主化期待勢力に大きな期待感を抱かせたものの、結局はいままで同様に居座りチャベス派が反対勢力を力で押さえつけて何も変化は生まれないという残念な予測が支配的です。
ベネズエラでの期待は萎んでしまうかもしれませんが、パラグアイの日本人移住地であるイグアス市では毎年恒例の大イベントであるEXPOイグアスの行事の一環として、パラグアイで初めての熱気球による世界選手権(Campeonato Mundial de Globos Aerostáticos)が開催されており、熱い空気で膨らんだ機体が大空を飾っています。

先週もお伝えした通り、南部アルゼンチンとの国境の街エンカルナシオン周辺では世界ラリー選手権も開催されており、初日となった木曜日は日本から参加の勝田貴元選手が一位をマークしました。https://www.as-web.jp/rally/1244679 (二日目は残念ながらリタイア)

着実に成長するパラグアイですが、衰退から復帰できれば、ベネズエラが持つ潜在的可能性は極めて大きいので、こちらの動きにも是非ご注目ください。
以 上