『愛する者は憎む』 シルビナ・オカンポ、アドルフォ・ビオイ・カサーレス | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『愛する者は憎む』 シルビナ・オカンポ、アドルフォ・ビオイ・カサーレス


『愛する者は憎む』

シルビナ・オカンポ、アドルフォ・ビオイ・カサーレス 寺尾隆吉訳

幻戯書房 2025年3月 235頁 2,700円+税 ISBN978-4-86488-318-4

 

ストーリーは、著者たちの別荘もあったアルゼンチンの保養地マル・デル・プラタ近郊の砂丘地帯にあるホテルを舞台に起きた2件の連続殺人を解明しようとする主人公の医師と同宿の関係者、捜査に来た警察の推理、意外な犯人が登場するアルゼンチン推理小説の先駆的作品。

アルゼンチンの夫婦揃って幻想文学作家として高く評価されている二人が1946年に出版した共作推理小説。以後75年以上の間、改版増刷されスペイン語からの翻訳も多く出されている。本文(5~136頁)の後訳者によるシルビナ・オカンポ(1903~93年)とアドルフォ・ビオイ・カサーレス(1914~99年)の詳細な年譜と訳者解題が付いていて、二人の作家の執筆、出版等活動の、時代背景が解説されている。扇動的ポピュリストとして1946~55年に登場したペロンの大統領在任期間と著者たちへの迫害なども明らかにしており興味深い。

〔桜井 敏浩〕