連載エッセイ516:冨田健太郎「エクアドルの地域別農業の特色」 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ516:冨田健太郎「エクアドルの地域別農業の特色」


連載エッセイ516

エクアドルの地域別農業の特色
コスタ・シエラ・オリエンテ地域別事例

執筆者:冨田 健太郎(信州大学 工学部内 アクアイノベーション機構)

要 約

筆者はエクアドルにおいても、農業技術協力の経験を有しており、三度の入国を果たしている。初回(二回)赴任は、2014年-2016年(JICAシニア海外協力隊として)[1]および2016年-2017[2]年でシエラ地域のインバブーラ(Imbabura)県イバラ(Ibarra)市であり、三回目は、2018年-2020年(前記JICAとして)でコスタ地域のグアヤス(Guayas)県グアヤキル(Guayaquil)市である。同国は、コスタ(Costaシエラ(Sierraおよびオリエンテ(Oriente地域の3地域に大別され、筆者は主に代表的な地帯における土壌調査がメインワークであった。この他、二回目赴任時には、灌漑の専門家と共同でのトウモロコシ栽培比較試験にも従事した。本稿では、前記3地域における農業の特色を簡易的に報告していこうと思う。ちなみに、主な栽培作物は、シエラ地域はジャガイモ、タマリロ (Solanum betaceum)(別名:ツリートマト=トマトの木)、サトウキビおよびマメ科牧草アルファルファ (Medicago sativa)であり、コスタ地域はカカオ、プランティン、ドラゴンフルーツ、サトウキビ、稲作であり、オリエンテ地域もカカオやサトウキビである。

1.はじめに

筆者にとって、エクアドルも馴染みの深い国の一つであり、初回(二回)赴任は2014年-2016年および2016年-2017年でシエラ地域のインバブーラ県のイバラ市、三回は2018年-2020年で、コスタ地域のグアヤス県のグアヤキル市においても活動を展開した[3]

なお、本稿では、コスタ・シエラ・オリエンテ地域別の農業の特色についての簡易報告であるため、上記2ヶ所での詳細な活動内容は割愛する。

2.エクアドルの地勢

エクアドルは南米のコロンビア(面積:1,141,000km2)の下部、ペルー(1,285,220km2)の上部に位置しているが、両国に比べると小国(283,560km2)であるにもかかわらず、地域には多様性が見られ、大きく、コスタ地域シエラ地域およびオリエンテ地域の3地域に類別されている。コスタとはスペイン語で海岸のことで、太平洋側の低地を指す。他方、シエラは山脈のことでアンデス地域、オリエンテは東側のことでこれはアマゾン地域を指す。これら3地域は、海抜、土壌条件、降水量の違い等により、農業のあり方も大きく異なっている。

筆者は、このエクアドルにおける主な活動は、これら3地域にわたった、代表的な地域での土壌理化学性調査であった。図1にエクアドルにおける調査地域を示す。写真1に、図1の右側に示しているように、コスタ地域のサンタ・エレナ(Santa Elena)県コロンチェ(Colonche)地区およびオリエンテ地域のパスタサ(Pastaza)県プーヨ(Puyo)地区における土壌断面調査の状態をそれぞれ示す。

図1 土壌調査マップにおける調査地点

左側のコスタ地域のサンタ・エレナ県は、塩類集積土壌地帯(年降水量は155mm)で、周りにはサボテンが自生している環境であったのに対して、右側のオリエンテ地域のパスタサ県では、同県職員同行の下、カカオ圃場での土壌断面調査のデモンストレーション光景である。アマゾン地帯の年降水量は4000mm以上にも達し、大量の雨水も大きな溝を造って、農地外部に排出する形をとっている。


写真1 両県における土壌断面調査光景(左, 2019:右, 2018)

写真2にチンボラソ(Chimborazo)県コルタ(Colta)地区(年降水量は560mm)の土壌断面調査光景(左)を示す。ここは、海抜約2800mもあり、主に火山灰土壌であった。同写真左の土壌調査協力者(農家)は、インディヘナで伝統的な帽子を着用している。インディヘナの方々(同写真右)は、インバブーラ県でもそうであったが、前記帽子の他、朝夕の寒さ対策として独特の衣装を着ている(コスタやオリエンテ地域には見られない)。


写真2 チンボラソ県のコルタ地区の土壌断面調査, 2019および同地区のインディヘナ, 2020

このような地域別での土壌調査に従事し、その理化学性分析結果に基づいた合理的な肥培管理のあり方を検討していくのが筆者の仕事である。コロナ禍緊急帰国の影響もあり、それを実際に実施できたのは、グアヤス県グアヤキル市内にあるESPOLの生命科学部圃場での栽培比較試験[4]のみであったが、本稿では、土壌に関する詳細な結果は割愛して、主に農業の形態について簡易的に報告していく。

3.シエラ地域の農業

1).ジャガイモや施設野菜類

アンデス地域なので、主な栽培作物はジャガイモ(主食として)であった(写真3)。この他、小規模野菜類も豊富であり、トマトやピーマン(写真4)の他、初めて、タマリロ(ツリートマト)[5](写真5)を観察することもできた。訪問場所で、お土産に大量の果実をいただき、下宿先の大家さんや県庁スタッフにも分けたものであった。


写真3 インバブーラ県コタカチ(Cotacachi)地区でのジャガイモ栽培光景, 2014


写真4 インバブーラ県のピマンピーロ(Pimampiro)地区の施設トマトとサン・ブラス(San Blas)地区のピーマン, 2014

このサン・ブラス地区は、インディヘナの町であることから、貴重な光景を目にすることができた。動画にも収めたが、伝統的な牛耕である(写真6)。娘さんが協力する形で鋤を固定し、二頭の繋がれた牛が土を耕すのである。


写真5 インバブーラ県のサン・ブラス(San Blas)地区のツリートマト, 2014


写真6 サン・ブラス地区の伝統的な牛耕光景, 2014

2).サトウキビ

筆者は、初回赴任時のインバブーラ県の北東部のサリナス(Salinas)地区は、乾燥地帯かつ塩類集積土壌が多い関係上、耐塩性作物であるサトウキビの栽培を目にすることが多かった(写真7)。このSalinasのSalであるが、これは塩を意味する言葉であり、この地域では、塩が重要な市販物であった。この塩を売ることで外貨を得たことから、サラリー(Salary)という語源であり、全国的にも根付いている言葉である。


写真7 インバブーラ県サリナス地区のサトウキビ, 2014

3).アルファルファとテンジクネズミ

この他、小規模野菜栽培等を見受けることがあったが、筆者にとって一番興味があったのは、マメ科牧草の一つであるアルファルファの栽培であった(写真8)。


写真8 インバブーラ県サリナス地区(2014)およびチンボラソ県コルタ地区(2019)のアルファルファ

土壌学的な話になるが、高pH条件の土壌では、鉄や亜鉛等が、植物には吸収・利用されにくい形(不溶化)になってしまう。そこで、このアルファルファは、根からクエン酸等の根酸を分泌して、土壌中の沈殿鉄を溶解して、イオンの形にして吸収する能力を有している。そのため、チンボラソ県のコルタ地区の他、ペニペ(Penipe)地区におけるアルファルファの分析結果からも、鉄の吸収量が高いことが理解できよう(図2)[6]。なお、インバブーラ県地区のサリナス地区は、土壌の有効態鉄含有量が3mg/Lと低いにもかかわらず、写真8の左側で示したアルファルファの鉄吸収量は91mg/Lであった。


図2 チンボラソ県コルタ地区とペニペ地区のアルファルファの鉄吸収量

このアルファルファの栽培目的であるが、これはアンデス住民の方々にとっての食用動物であるテンジクネズミ(動物性タンパク源として)を飼育するためである(写真9)。


写真9 インバブーラ県ウルクキ(Urcuquí)地区(2014)およびチンボラソ県コルタ地区(2019)のテンジクネズミ

前記アンデス地域の土壌条件によると推察するが、筆者も貧血状態に陥ってしまった。そのため、インバブーラ県庁の同僚から、アルファルファは鉄含有量が高いため、これのジュースを奨励された(写真10)。イバラ市のローカルマーケット内で、このガラスコップの大きさは、マクドナルドのLarge Sizeのコーラ類と考えていいだろう。適量の砂糖とともに、ジューサ-にかけてくれて、このコップの1.2-1.3倍量でUS$0.5であった。


写真10 アルファルファのジュース(一杯US$0.5, 2014

4. コスタ地域の農業

1).田辺農園の青果用バナナ

2015年10月29日、サント・ドミンゴ・デ・ツサァチラス(Santo Domingo de Tsáchilasにある田辺農園の青果用バナナ生産農場を訪問した。その前日(10月27-28日)は、同県サント・ドミンゴ市のエキノクシアル工科大学(Universidad Tecnológica Equinoccial: UTE)で開催された国際環境学会で口頭発表を実施した[7]

この地域の年降水量は、シエラ地域と異なって、海抜300mで2700mm程度と高く、農業生産にとっても好適環境であると考えていた。農園の総面積は350haで、その規模は東京ドーム約75個分であるという。なお、バナナは樹種ではなく、1年生草本植物であることを付記しておく(芭蕉科)。土壌が肥沃であれば、再芽するため、有機物による土つくりを実践しているということである(写真11)。


写真11 田辺農園のバナナ全景(左)と草本植物としての光景(右), 2014


写真12 袋詰めバナナ、バナナのカットおよび洗浄光景, 2014


写真13 バナナのパッキング光景, 2014

実際、作業場も見学させていただいたが、袋をかけてから12-13週間後に収穫し、収穫後は、熟成度チェック、洗浄、カット、パッキング等を行い、箱詰めを行うということであった。なお、洗浄には、井戸水を飲料水と同程度にろ過・調整した水を使用するとのことであった(写真12および写真13)。ここで生産されているバナナは、100%日本に輸出されており、船舶輸送で1ヶ月かかるということであった。その間、黄変したバナナは日本の検疫により、破棄されるとのことであった。

また、この農園は徹底的な有機農業に固執しており、ミミズ堆肥を中心とした有機物生産現場も訪問した(写真14)。この他、液肥も製造していた。


写真14 田辺農園内におけるミミズ堆肥生産現場, 2014

2).施設果菜類、カカオおよびプランティンの栽培

コスタ地域の南部になるが、グアヤス県のグアヤキル市近郊のダウラール(Daular)地区のカカオ栽培農家を訪問した。このグアヤス県は、先のサント・ドミンゴ・デ・ツサァチラス県と異なり、年降水量は800mm程度で、1月-4月までが雨季で、他月は乾季である。それゆえ、乾季における水確保が重要であり、大部分の農家で溜池を準備している(写真15)。


写真15 カカオ栽培農家での溜池, 2018


写真16 施設でのトマト栽培(左)と採用トマト(中)・ピーマン品種(右), 2018

まず、先のシエラ地域と同様、施設でのトマトやピーマン等の果菜類の栽培も盛んであった(写真16)。

写真17にカカオ栽培の光景を示す。左側はカカオ植物の全景であり、右側はプランティンを庇陰とした形のアグロフォレストリーもどきである。新天地で、このシステムを採用することは、樹種の植樹から庇陰形成までそれ相当の時間を要するものである。そこで、草本性のプランティンを設けることで、僅か1年で生長し、庇陰樹の代替物として活用できるのである。

写真18にカカオ果実(左)と果実内のマメ(右)をそれぞれ示す。これは直径15cmほどであり、小さいタイプであったように思う(大きいものは大きい)。そして、実際のマメであるが、おそらく、カカオ植物も含めて、初めて目にする方もおられるものと推測する。食品製造については、詳細は知らないが、簡易的に記すと、このマメを乾燥・粉砕させた後、砂糖とミルクを混ぜて製造したものがチョコレートとなるのである(砂糖とミルクを混ぜて粉末状態にしたものが、ミルクココアであろう)。


写真17 カカオ植物(左)およびプランティンを庇陰した形のカカオ栽培(右), 2018


写真18 カカオ果実の直径と中のカカオマメ, 2018

3).ドラゴンフルーツの栽培

筆者は、グアヤス県のイシドロ・アジョラ(Ishidro Ayora地区やロス・リオス(Los Ríos)県モカチェ(Mocache)地区において、外部生産者の依頼を受け、ESPOL同僚らとともに、筆者もドラゴンフルーツ栽培土壌の調査に出向いた。ここでは、ドラゴンフルーツの栽培光景を示す(写真19)。このドラゴンフルーツは、筆者も初めて目にした作物であるが、樹種ではない。サボテンのような葉が長く伸び、そこから根を出して、土中の養分を吸収しているのである。もちろん、栽培に当たっては支柱が必要である。黄色い果実の外側には棘(とげ)があるが、その中身は甘くて非常に美味しいものであった。


写真19 ドラゴンフルーツ(左:イシドロ・アジョラ、右:モカチェ地区にて), 2019

4).ESPOL生命科学部圃場でのトウモロコシ栽培試験

注釈3でも記したが、灌漑の専門家と共同研究という形で、トウモロコシの栽培比較試験を実施した。もちろん、トウモロコシもエクアドルにおいては、重要な作物であること付記しておきたい。写真20には、乾季におけるスプリンクラーと養液土耕栽培での栽培試験光景を示す。もちろん、写真15で示したように、水源は、圃場に隣接する溜池(雨季の雨水を貯水)を使用している。


写真20 乾季におけるトウモロコシ栽培試験(左:スプリンクラー、右:養液土耕栽培), 2019

5).プランティン栽培

同大学圃場も含めて、グアヤス県では灌漑設備を用いた形で、プランティンのプランテーションを実施している。写真21は、これは同僚教官と学生引率の形でのグアヤス県のサリトレ(Salitre)地区でのプランティン栽培光景を示す。


写真21 グアヤス県サニトレ地区でのプランティン栽培光景, 2018

6).サトウキビ栽培

同僚と学生引率の下、グアヤス県グアヤキル市近郊のサン・カルロス農業工業協会(Sociedad Agricola e Industrial San Carlos S. A.)[8]の大規模サトウキビ生産農場(製糖工場あり)を訪問した。写真22に、同協会入口とサトウキビの収穫光景を示す。


写真22 サン・カルロス農業工業協会入口とサトウキビの収穫光景, 2019


写真23 収穫したサトウキビ(左)とセンターピボット灌漑システム(右), 2019

写真23に収穫サトウキビとセンターピボットシステムによる灌水光景を示す。この時期は、大部分のサトウキビの収穫が終了しており、未収穫状態のサトウキビに対して、センターピボット灌漑システムでの灌漑光景を観察することができた。

7).水田稲作

写真24に、グアヤキル市近郊の水田稲作の光景を示す。この地域は、河川水を用いた水田稲作である。土壌も肥沃であるため、ヘクタール当たりの籾収量は8000kg-9000kg収穫できるという(ESPOL同僚教官の私信)。


写真24 河川水等を活用した大規模水田稲作, 2019

5.オリエンテ地域の農業

1).熱帯雨林地帯

同地域は、パスタサ県のプーヨ市とナポ(Napo)県のテナ(Tena)市のみ土壌調査に出向いた(コスタ地域やシエラ地域よりも訪問箇所少)。パスタサ県は、ESPOL同僚と出張し、パスタサ県県庁スタッフが案内をしてくれた。テナ市は、筆者の知る同国在留日本人(カカオトレーダー)の依頼により、同氏と関係あるエクアドルスタッフとともに土壌調査に出向いた。これらの地帯は、正しくアマゾンの熱帯雨林地帯であった(写真25)なお、この地域での栽培作物はカカオ、サトウキビおよびタロ(熱帯のサトイモ)等であった。


写真25 プーヨ市近郊(左), 2018およびテナ市近郊の熱帯雨林, 2019

2).カカオ栽培

ESPOL同僚ととともに、グアヤキルへ戻る途中、パスタサ県県庁職員らとともに、プーヨ市近郊にあるサキフランシア農場(Finca Saquifrancia[9]のカカオ農園を訪問した。なお、写真1は同農園での土壌調査光景であるので、まず、写真26には同農場の看板とここで市販されていたココアを示す。写真27に同農場内のカカオ栽培光景を示す。


写真26 サキフランシア農場の看板(左)と市販ココア(右), 2018


写真27 カカオ栽培光景, 2018

アマゾン地帯なので、豊富な降水量が得られるため、コスタ地域のような溜池が不要であることは理解できる。しかしながら、写真1でも示したように、降水量があまりにも多く、浸水してしまう危険性があるため、圃場の所々に大きな溝を設け、排水に力を入れていることも理解できた。

3).サトウキビ栽培

ESPOL同僚とパスタサ県職員同行の下、サトウキビ栽培土壌の調査にも出向いた。実際、熱帯雨林地帯の中での小規模なサトウキビ栽培であった。写真には写っていないが、サトウキビの他、プランティンと混作している光景も見受けられた。


写真28 サトウキビ栽培と収穫キビ, 2018

4).タロ栽培

写真29がタロ栽培光景であるが、これはサトウキビ栽培畑からプーヨに戻る途中、偶然見つけることができた。さらに、興味深かった事項は、傾斜地において栽培していることであり、これは豊富な降水量(スコール)に対して、土壌侵食の軽減に貢献する要因であると考えた。実際、コスタ地域と異なって、このオリエンテ地域では、筆者は水田稲作の光景を見たことがなかった。オリエンテ地域の住民が、コメを常食としないのか?ここは不明であるが、ここでは、タロが主食作物として重要視されているのかもしれない。


写真29 傾斜地でのタロ栽培光景, 2018

農耕不適地(付録

このように、エクアドルは地域の多様性に応じて、農業にも多様性があることが理解できよう。付録として、農耕不適地2ヵ所を写真30に示すこととする。同写真左は、写真1左に示したサンタ・エレナ県のコロンチェ地区(図1も参照)である。ここは、塩類塩性土壌地帯であり、土壌のCa飽和度が89.5%、Na飽和度が94.1%、Mg飽和度は32.1%およびK飽和度が3.6%であり、塩基飽和度は合計219.2%となった。つまり、200%以上で、その半分がNa飽和度であるため、農耕不適乾燥地帯であることが理解できよう。実際、巨大なサボテンが点在しており、粗放な放牧が主に実施されていた。

他方、同写真右は、チンボラソ県(同じく、図1参照)の海抜4000m付近にある山頂で、コスタ地域のグアヤス県グアヤキル市から、前記チンボラソ県県庁所在地であるリオバンバ(Riobamba)市に向かう途中のバスからの撮影である。実際、樹木もなく、高山草原のみであり、基本的には、4000m級となると農耕不適地である。


写真30 サンタ・エレナ県コロンチャ地区およびチンボラソ県の山頂4000m付近(左右, 2019)

7.おわりに

簡易的であったが、エクアドルは小国であれ、コスタ・シエラ・オリエンテ地域という多様性な環境下であり、農業の形態が大きく異なることが理解できよう。実際、コスタ地域とオリエンテ地域では、カカオやサトウキビ、それにプランティンは共通栽培作物であったが、前者は短期雨季長期乾季により、溜池が必要であるが、後者は浸水防止のための溝を設けるということが大きな違いである。他方、シエラ地域は、アンデス原産のジャガイモを中心に、インディヘナによる小規模野菜栽培の他、ツリートマトの栽培も見受けられた。また、一般的に降水量が少ないため、塩類集積土壌が散見されるが、このような地帯では、アルファルファが適作物であり、貧血改善の他、食用動物テンジクネズミの飼料として活用されていた。

【参考文献】
  1. コロンビア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%93%E3%82%A2

  1. エクアドル

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AB

  1. 井上美希・冨田健太郎. 2018. エクアドル北部シエラ地域における村民の貧血と土壌の塩類集積による有効鉄の沈殿の関係およびアルファルファの普及案.公立八鹿病院誌. 第27号. 33-40.
  2. ペルーhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%BC
  3. K. y J. Proaño. 2023. Evaluación de la salinidad del suelo por nuevo método para análisis químico del suelo, Ecuador.  Brazilian Journal of Animal and Environmental Research (BJAER). 6 (1). 857-870. https://ojs.brazilianjournals.com.br/ojs/index.php/BJAER/article/view/58569
  4. K. y J. Proaño. 2022. Evaluación del rendimiento del grano con los tres híbridos asociados con tres niveles de la fertilización nitrogenada en el cultivo de maíz entre la aspersión y goteo por fertiriego durante la estación seca en un suelo Vertisol.  Agrárias: Pesquisa e Inovação nas Ciências que Alimentam o Mundo VIII. Editora Artimes. 200-208. https://www.editoraartemis.com.br/artigo/32885/
  5. Proaño. J. y K. Tomita. 2021. Evaluación de tres híbridos de maíz con niveles nitrogenados durante la estación lluviosa, Guayaquil, Ecuador. ALFA, Revista de Investigación en Ciencias Agronómicas y Veterinarias enero-abril Vol. (5) (13): 53-64. https://revistaalfa.org/index.php/revistaalfa/article/view/98

[1] 初回赴任時は、インバブーラ県庁での植林のための土壌調査を主に実施したが、同県庁職員が、同国国立大学として、近隣の北部工科大学(Universidad Técnica del Norte: UTN)の大学院生であり、同氏の依頼で、同大学大学院教官としても活動した。そして、当初、同氏の修士論文指導副査教官となったが、主査教官の定年退職により、筆者が主査にさせられた。しかしながら、JICAの2年は長い期間でもあるが、物理的にこの期間で修士論文指導は不可能である。それゆえ、修士論文指導を完結させるため、筆者自身が必要な永住権や免許取得にチェレンジし、これらの資格を得ることができたので、有給教官として活動した。

[2] 2016年-2017年は、院生修士論文指導教官としての職務遂行のため、現職先より休職願いを受け、学術研究用プロフェッショナルビザ(9V EC)+教育省高等教育・科学技術庁(Secretaría de Educación Superior, Ciencia, Tecnología e Innovación: SENESCYT最高級の上級研究員・大学教員免許取得下での有給で大学院教官を継続し、任務完了後に帰国した。

[3] 二回目の派遣も現職参加であったが、国立リトラル工科大学(Escuela Superior Politécnica del Litoral: ESPOL)生命科学部に赴任となり、灌漑を専門とする同僚とともに土壌肥培管理研究や塩類土壌の調査等を実施した。残念ながら、コロナウイルスの世界的拡大により、2020年3月20日、活動途中での外務省より緊急帰国を命じられ、以降、Zoomを駆使した形での共同授業や研究等に励んできた。

[4] ESPOL生命科学の灌漑を専門とする同僚と共同研究で、雨季(1月-4月)天水依存での窒素施用水準(50, 100, 150kgN/ha)でのトウモロコシ3雑種の他、乾季(5月-12月)では、同一施肥水準ならびに同一3雑種でのスプリンクラーと養液土耕栽培(水溶性肥料を溶解した水を点滴灌漑する方法)比較下での栽培比較試験を実施し、その成果は、2023年11月下旬に、エクアドルの首都キト(Quito)市にあるエクアドル中央大学で開催された国際土壌学シンポジウムにて口頭発表した。

https://www.youtube.com/watch?v=E70N2iHsc8U さらに、スペイン語で2つの雑誌にも掲載された。https://revistaalfa.org/index.php/revistaalfa/article/view/98 & https://www.editoraartemis.com.br/artigo/32885/

[5] タマリロ:ナス科の植物でトマトの近縁種で、アンデス地域ペルー、エクアドル、ボリビア、コロンビア、チリ等に広く分布する。 Wikipedia参照

[6] 2019年、JICAエクアドル事務所(東京本部も含む)を通じて、筆者にチンボラソ県の村民生活向上プロジェクトにおいても緊急特別協力依頼を受けた。初回赴任時のインバブーラ県での活動経験もベースにして、チンボラソ県各地域で栽培されていたアルファルファのサンプリングも行い、同国農牧研究所(Instituto Nacional de Investigación Agropecuaria: INIAP)に土壌分析とともに依頼した(参考文献にも記したが、土壌分析結果については、コスタ地域のサンタ・エレナ県のコロンチェ地区と比較する形で、別途、ブラジルの学術雑誌に投稿・掲載された)。

[7] 環境保全の観点から、1時間枠での口頭発表を2つ実施できる機会に恵まれ、一つ目がインバブーラ県の土壌理化学性特性、2つ目が森林保全の視点からのパナマでのシルボパストラル・システムの成果であった。実際、同県は熱帯雨林気候に近かったので、後者の発表に人気があったようである。

[8] サン・カルロス農業工業協会のURL:https://www.sancarlos.com.ec/?lang=en

[9] サキフランシア農場(Finca Saquifrancia)のURL:https://fincasaquifrancia.wixsite.com/turistico