『質の高い成長概論 -第一分冊【理論編】、第二分冊【事例分析編】』
広田 幸紀編著 国際協力機構(JICA)緒方貞子平和開発研究所
2025年8月 436・146頁 ISBN978-4-86357-114-3、978-4-86357-115-0
(JICA同研究所サイトの「出版物→書籍および報告書」から無料ダウンロード可)
国際協力機構(JICA)が開発途上国への協力大綱の重要な課題の一つとしている、生産や所得の継続的な伸びを指標とする伝統的な成長概念に、包摂性や持続可能性、強靱性の観点を付け加えた新しい概念の「質の高い成長」について、経済学の理論を使って体系的に解説しその度合いを測る指標の構築に取り組む「理論編」と、わが国開発協力のアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国での産業、インフラ農業、都市開発の事例を考察した二分冊。
事例分析はラテンアメリカではペルーとコスタリカを取り上げ、それぞれ経済発展の概況、成長と包摂性・強靱性・持続可能性を述べ、ペルーについては地方部まで及ばない貧困削減、自然災害分野の対応力強化、インフォーマルセクターの改革を、コスタリカについては貧困と格差は改善させてきたが、高度な製造業とサービス業をもたらしたインテル社の製造撤退の後付加価値の高い農作物・加工業への自国民の参画、女性労働者の不当な制限、戦略的インフラ投資の不足、外資依存などの課題を乗り越えることなどを指摘している。
〔桜井 敏浩〕