『サボテンは世界をつくり出す -「緑の哲学者」の知られざる生態』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『サボテンは世界をつくり出す -「緑の哲学者」の知られざる生態』


堀部 貴紀 朝日新聞出版(朝日選書)

2025年10月 248頁 950円+税 ISBN978-4-02-295341-4

 

サボテン研究者の中部大学応用生物学部准教授が、南米が原産だが今や全世界に拡がって生育しているサボテンとの出会いから、国旗にサボテンが描かれ、代表的な食用サボテンのウチワサボテン(若い茎を「ノバル」。果実を「トゥナ」)を日常的に食しているサボテンの聖地メキシコを訪れて収穫・販売の現場を(P.51~93)、欧州最大のサボテン果実生産地のシチリア、ローマのFAO(国連食糧農業機関)本部、日本のウチワサボテン群生地の茨城県神栖市や銚子市、300年以上前から育ててきた静岡市の龍華寺などなど各地を訪れ、研究者や現地関係者との交流などを語り、広範ではサボテンの分類、高温や乾燥に耐える仕組みをもった驚異の生態、家畜飼料として、その二酸化炭素固定や土壌保全効果から食料可能性や地球温暖化防止の世界的救世主となることを指摘している。さらに著者が研究室で始めた水耕栽培の試みから植物工場での栽培実験など、サボテンの普及と応用策を提起している。

随所に著者のサボテンへの打ち込み、研究と普及への情熱が感じられる。

〔桜井 敏浩〕