執筆者:硯田一弘(アデイルザス代表取締役、在パラグアイ)
カトリック教徒人口が太宗を占めるパラグアイで最も重要な季節になりました。
12月ですから25日=クリスマスというのは勿論ですが、その前の8日に国中の教徒がCaacupeというAsunción近郊の街にある大聖堂を目指して徒歩で巡礼に訪れるのです。
今年も聖なる記念日を前に、既に700人もの敬虔な信者が大聖堂を目指して歩いているそうです。この人数はこの週末にはピークを迎え、数万人という数字に膨れ上がる事になります。日本の正月に寺社仏閣が初詣の参拝者でごった返すのと同じで、一年の締め括りの大イベントとなる訳です。
最近では南米でも無宗教の若者が増えて、むしろ日本のアニメや韓国のKポップに熱狂す傾向もあるものの、週末には教会でミサに参加して、その後は大家族でアサード=バーベキューを囲むというのが一般的な南米スタイルと言えます。
日本では急に寒波が来て、短い秋から厳しい冬が始まったようですが、パラグアイでは明日の日曜日は猛暑の38℃、祭日当日の月曜日は雷雨の降水確率90%という厳しい予報となっています。

ペルーでは7月に同じようなカトリックの祭日があり、北部Piuraから約1000㎞の道のりを大聖堂のある首都リマまで本物の十字架を担いで巡礼する人を見たことがあります。
条件が厳しければ厳しいほど、主イエスが受けた難行と重なるということで、厳しい条件をむしろ有難く思う巡礼者が多いのも信仰のすごいところ。
とはいえ、熱中症にかからないように飲み物のテレレ(冷たいマテ茶)を携行して水分補給しながら歩いてほしいものです。と言っても、テレレの容器がまた重く大変なのですが。

今週はノーベル賞の授賞式がスウェーデンの首都ストックホルムで開催され、日本からの受賞者である京都大学の北川進特別教授と大阪大学の坂口志文特別栄誉教授にメダルが授与されたことは、明るいニュースとして大きく報道されました。
一方、平和賞の授賞式に関しては、受賞者であるベネズエラのマリア・コリナ・マチャド氏がノルウェーの首都オスロで式の行われた10日に間に合わなかったことも色々なメディアで取り上げられました。
選挙の結果を改ざんして居座り続けているマドゥロ偽政権からの弾圧を受け、授賞式に参加するために決死の脱出行を図ったいきさつについても、多く報道されていますが、改めてそのルートをご紹介します。

マチャド氏は、最寄りであればベネズエラの沖合70㎞弱のところにあるキュラソー島に漁船で悪天候の中を渡っていったようで、大変な危険を冒しての渡航だったようです。
マチャド氏については以前も書いた通り、彼女が国会議員に当選した2010年に当時住んでいたカラカス市チャカオ区のアパート前の広場に来て、近所の人たちと一緒に演説を聴きましたが、当時から腐敗したチャベス政権を厳しく批判して聴衆の支持を得ていました。
今回の報道の中には、トランプ政権におもねる姿勢が怪しからんという論調のものもありますが、これまで何度も不正選挙で居座りを続けて多くの人民を弾圧してきたチャベス→マドゥログループが放置されたことで南米中に多くのベネズエラ人が難民として離散している現状から、正当な政治を取り戻すためには、理不尽であっても米国政権からの支持を取り付けることが重要との判断であるということを理解してもらいたいと思います。
さて、キュラソーというのは、ベネズエラ沖のカリブ海に浮かぶABC三島というオランダ領の島の一つで、いずれも観光地として高い人気を博しています。
ABCというのは、Aruba・Bonaire・Curaçaoのことで、これらの島々ではパピアメントというスペイン語・オランダ語・英語の混じった独特の言語を話し、ダイビングやクルージングのメッカとして、とくに北半球が真冬となる今の時期に多くの観光客を迎え入れます。https://www.curacao.com/es/

キュラソー島はABC三島の中で一番大きく、人口も多いので、欧米からの直行便もたくさん飛んでいます。また島特産のオレンジで作られるリキュールも有名で、青色に着色されたブルーキュラソーはお洒落系のカクテルとして人気を博しています。
またキュラソー島にはベネズエラ原油を精製する製油所もあり、オランダ領とは言うものの、経済的にはベネズエラとの結びつきが極めて強いところでもあります。チャベス派支配の後は一度も行っていないので、現状がどうなっているかはわかりませんが、今回のノーベル賞受賞を機に、ベネズエラが民主化を取り戻せるようになったら、カラカスから出向いてみたいと思います。
この土曜日にブラジル・アルゼンチン・パラグアイ三国国境の街であるFoz de Iguazú(ポルトガル語ではFoz do Iguaçu)で南米南部経済共同体Mercosurの首脳会議が開催されました。
https://www.elnuevoherald.com/noticias/america-latina/article313859613.html

メルコスールとはパラグアイ・ウルグアイ・ブラジル・アルゼンチンの四カ国が地域経済の強化を目指して1991年に組成された経済連合の枠組みで、ボリビアも準加盟国となっているほか、南米にある経済連携の中で最も有力な共同体と認識されています。
今回のサミットでは、メルコスールとEU欧州共同体との貿易自由化に向けた内部調整の他、トランプ政権によるベネズエラ攻撃に関する立場の表明についても討議され、ベネズエラ問題に関しては親トランプのアルゼンチン・ミレイ大統領が侵攻を支持した半面、ブラジル・ルラ大統領は批判的な態度に終始したようです。
いずれにしてもEUとのFTA締結に関しては、年明けの合意を目指して最終調整することとなり、並行してメルコスールが交渉中であるUAEアラブ首長国連邦・カナダ・日本・イギリス・インドネシア・マレーシアといった国々との進捗を目指して早急にEUとの合意を目指す方向で合意された模様です。
これに先立ってパラグアイ・ペニャ大統領は金曜日にサミット会場となるブラジル側Foz市の対岸であるパラグアイ側Presidente Franco市で改正したブラジル・パラグアイを結ぶ第二架橋であるPuente Integralの開通式を執り行い、橋への取り付け道路の遅延から遅れているブラジル側へのプレッシャーをかけました。

ここで紹介するのは今日の言葉Habilitación。そもそもの意味は許可とか認可ですが、habilitarという動詞は資格や権限を付与する、という意味の他、提供するとか利用する、整備するという意味もあって、スペイン語ではよく使う単語のひとつ。
せっかく作った橋や道路が早く使えるようになって、現在唯一の交通手段となっている友情の橋の混雑が緩和されることを期待します。因みに日本語でもよくつかわれるリハビリという単語はrehabilitacionという英語は、厚生とか復興という意味ですが、繰り返しを示すreという接頭語が付いているhabilitationという英語では住む場所という意味があるものの、改めて出来るようにする、という意味ではスペイン語のHabilitaciónの復活という方がピンとくると思います。日本とメルコスールとのFTAも早くhabilitarされることにも期待します。
いよいよ2025年も最後の週末を迎えました。
浜松では昨日から急劇に寒波に見舞われ、0℃の寒い朝となり、日中は暖かくなって年末までは穏やかな冬日となるものの、元旦からは寒気が戻って0~10℃以下という冬日になるそうです。
一方、パラグアイの首都アスンシオンでは当分の間、朝25~6℃で日中の最高気温が35℃前後という真夏日の年末年始となるとの予報です。
日本では高市政権発足直後の首相発言に反発した中国が11月末から日本への渡航制限をかけた結果、インバウンドの客足が減って、観光地の混雑も多少緩和されたと報じられていますが、パラグアイでは今年は各種のイベントが開催された結果、ホテル業は非常に良好な成果を挙げたようです。
“Sector hotelero cierra 2025 con fuerte impulso del turismo de eventos.”(ホテル業界は各種観光イベントの成果で、強力な追い風を受けて2025年の幕を下ろす)
記事によると、今年のホテルの平均稼働率は60~65%で、2024年に記録した国外からの年間来訪者数220万人・外貨収入7.66億ドルを大きく上回る結果となりそうとのこと。
来訪者数が220万人というのは随分少ないように感じますが、そもそも総人口700万人弱の国ですから、人口比で3割以上の人の流れがあり、GDP474億ドル≒7.4兆円のGDPの1.6%が観光による収入ということになります。
ちなみに、日本のインバウンド来客数は2024年が3687万人で、今年は1-11月累計で3900万人、外貨収入も2024年実績で8.14兆円で、人数・金額共に昨年実績を上回ることは確実で訪日外国人観光が大きな産業に成長したことは事実です。しかし、GDPに占めるインバウンド収入の比率は1%程度であり、外貨収入をどのように増やすか、が今後の大きな課題と言えます。
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/_files/20251217_1615-1.pdf
ちなみにインバウンド来客数を4200万人と仮定すると、日本の総人口1.238億人と比較して34%、つまり総人口の三人に一人相当の外国人の動きがあった訳です。これに対して日本人が出国した人数は11月までの累計で1343万人。これは延べの人数ですが、ざっくり言えば平均して国民の1割が海外への旅に出たということになります。別の統計で、日本人のパスポート保有率がコロナ前は24%だったものが現在は僅か17%に下がっているとのこと。来年からはパスポートの発行手数料が下がるそうですから、若い人たちを中心に、国内にとどまらず広く海外の様子を見分してもらいたいものです。
https://dot.asahi.com/articles/-/262547?page=1
ところで、農業国パラグアイを特徴づける作物の一つに胡麻がありますが、今年は好天に恵まれて昨年を大幅に上回る4万トンの輸出となったそうです。

豊作に伴う価格の下落によって、金額ベースでの伸びはそこそこであったものの、パラグアイにおける胡麻の栽培は小規模農家の現金収入を増やすという低所得者層の収益改善に寄与しており、品不足による価格高騰と政策的なダブつきで方向性を見失っている日本のコメつくりと違って、今後も国策として栽培面積を増やすことになると思われます。
今日の言葉「勢い」という観点で、パラグアイの勢いの良さを示すのが対ドルレートの推移です。以下のグラフで示す通り、一時ドル当たり8,000グアラニとなって大幅に軟化したのですが、7月以降急激に強くなって半年で15%ほどの通貨高の状態になっています。

同じ時期の日本円のグラフでは、4月下旬に¥140/US$の高値を付けたものの、その後は円安に振れ戻して年末の現時点で¥156/US$と、非常に安い状態で年明けを迎えることになる見込みです。

通貨高でもインバウンド好調なパラグアイと、外貨呼び込みの為に通貨安は歓迎しつつも、輸入物価への影響を考えるとこれ以上の安値はつけてほしくない日本。
年明けの世界経済がどのような方向に動くのか、注目しつつ今年最後の報告といたします。
では皆様、良いお年をお迎えください。
Feliz año nuevo!
以 上