執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(早稲田大学講師・パナマ共和国弁護士)
経済財政省は、弁護士、税理士、その他の税務に係る専門家からのパブリックコメントを求めて、税務法典改正法案を公開した。パナマ政府は、EUによるタックスヘイブンリストからの削除を目指し、10月に税制改正方針を発表した。経済財政省の法案は、多国籍企業を対象としている。現在、このような企業はパナマに主な活動がない場合であっても、配当金、金利、印税のような一部の消極的な収入は非課税とされている。これに対して、改正法案の下では、パナマに本店または支店を置き、労働者を雇い、戦略的な判断を下すといった実質的経済活動を行う多国籍企業の消極的収入については、今まで通り非課税とされるものの、これら条件を満たさない多国籍企業の消極的収入については課税される。。また、経済財政省は、パナマ税制の基本である国内源泉所得制度は廃止されず、ペーパーカンパニーを減らすことが改正法案の目的であると説明している。
しかし、パナマ弁護士連合会は、経済財政省がパブリックコメントの期間を2日間としたことは、このような法案の効果および影響を分析するにはあまりにも短いと述べ、改正に賛成しない旨を発表した。他方、実質的経済活動を評価する点について、企業から賛成の声も上がっている。
パナマ税務法典、特に、海外活動により得られた収入を非課税とする国内源泉所得制度は、不公正な競争を生み出しているとしてEUに批判されている。2013年、国内源泉所得制度を廃止する法律が制定されたが、間もなく撤回された。
2025年1月から10月にかけて、政府債務は50億2,300万ドル増加して、11月下旬時点で、パナマの総合国家債務は589億800万ドルであることが分かった。1990年以降、パナマの国家債務は徐々に上がって、コルティソ政権(2019-2024)は新型コロナウイルスのパンデミックによる政府歳入の減少に応じるため、国債の発行を利用し、現在、政府は、国債の利息として年間30億ドルを払っている。これに対して、チャップマン経済財政省は、ムリノ政権の目標の一つは政府借金および政府歳入の赤字への対応だと述べている。
近年のパナマ国家債務傾向は以下の通りである。

また、政権別の国家債務状況は次の通りである。
12月10日、政府は2026-2027年の最低賃金を決定したと発表した。パナマの最低賃金は73の業界と2つの地域ごとに定められており、全部で59種類に分かれている。 労働法では、最低賃金の改正は、政府、労働者、および民間企業の代表者で構成される委員会の推薦に基づいて政令により行われるとされている。
執筆時点では新たな最低賃金は公開されていないが、労働局によると月9ドルから16ドルと説明されている。改正前、ラテンアメリカの平均収入ランキングでは1,044ドルでコスタリカが1位、892ドルでウルグアイが2位、827ドルでパナマは3位となっている一方で、近年、労働者の状況は悪化している。報酬が良く成長している業界(海事流通、パナマ運河、金融)は人件費を減らしている。また、観光と関連業界(レストラン等)は常に新たな労働者を採用しているが、これらの業界の賃金は低く、家族を養うには足りないという批判の声も上がっている。
1月から9月の間、パナマのGDPは4.2%成長し、他のラテンアメリカ国と比べると物価のインフレ率が比較的低いにも関わらず、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)によると、パナマは、ラテンアメリカにおいてコロンビアの次に貧富の差が激しい国だと指摘されている。
トランプ政権が採用した入国対策によって、アメリカを目指した移民が南米に移動し始め、パナマのダリエン県が改めて注目されている。アメリカを目指しコロンビアから入国する不法移民が2021年は約134,000人、2022年は約250,000人、2023年は約520,000人、2024年は約303,000人となり、無視できない問題となっていた。新型コロナウイルスパンデミック中、パナマ政府はワクチン接種を含め、移民に医療を提供したほか、移民の中には、ギャングやテロ組織に属している者も発見されレイプのような犯罪も確認されたため、政府にとって重大な課題であった。
2024年7月に行われた就任式では、ムリノ大統領が移民問題に関して、不法移民の移動は認められないと述べ、同月、バイデン政権と移民の強制返還について本合意書を署名した。強制返還協定の下では、アメリカ政府が返還に必要な設備、交通機関、その他の支援を提供する。
以上の政策により、2025年にアメリカを目指す移民は約3,100人(前年同期比99%減)となり、米国から南米に戻った人数は約23,000人となっている。帰還移民の多くはコロンビアおよびベネズエラに向かっておりダリエン地峡を横断するルートより、コロン県から出航する違法な船でカリブ海を渡っている。しかし、このルートの安全性は確保されておらず、11月上旬に23人が乗っていた個人用漁船が沈み、3歳の子供の死亡が確認された。