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2025年11月29日(土)および30日(日)に青山学院大学相模原キャンパスにおいて開催されたラテン・アメリカ政経学会の第62回全国大会の中で、パネルディスカッション「トランプ政権とラテンアメリカ ―『アメリカ第一主義』がもたらす変動と対応」(ラテンアメリカ協会・共催)が実施された。
基調講演
冒頭では、前嶋和弘氏(上智大学総合グローバル学部教授)による招待講演「トランプ第2次政権のラテンアメリカ政策」が行われた。前嶋氏は、現代アメリカの政治・外交に関する多数の著書や論文を発表しており、2022年から2024年にかけてアメリカ学会会長を務めた実績を持つ。
講演の中で前嶋氏は、第2次トランプ政権のラテンアメリカ政策について、「ラテンアメリカは米国の勢力圏であり、米国は棍棒外交によって同地域に介入する正当な権限を有する」とするかのような姿勢を示す「シン・モンロー主義(モンロー主義2.0)」を掲げていると指摘した。トランプ政権は、左派的イデオロギー、麻薬、移民といった観点から米国にとって脅威と見なされる国々――ベネズエラ、ニカラグア、キューバ、ブラジル、メキシコ、コロンビア――に対しては敵視的な政策を展開している。一方で、トランプ氏に心情的に共鳴するエルサルバドル、エクアドル、アルゼンチンに対しては、友好的な姿勢を示している。このように、同政権のラテンアメリカ政策は、明確に「敵」と「味方」を峻別し、それぞれに異なる対応を取る点に特徴があると前嶋氏は述べた。「敵」と見なされた国々に対しては、高関税の適用、ビザ発給における差別的措置、移民の強制送還、さらにはカリブ海における軍事的圧力の行使など、懲罰的な手段が用いられている。
さらに前嶋氏は、たとえ米国の中間選挙で共和党の勢いが後退したとしても、トランプ政権の強硬なラテンアメリカ政策は大きくは変わらないだろうと予測する。その理由として、現在も大統領令を多用して議会を迂回しながら政策を推進しており、仮に司法によって差し止められた場合でも、別の手段を講じて政策を継続する可能性が高い点を挙げた。また、トランプ氏の岩盤支持層を構成するキリスト教福音派は、ラテンアメリカからの移民を「犯罪者」であり、米国民の雇用を奪う存在と見なす排外的かつ内向きなナショナリズムに傾いている。前嶋氏は、トランプ政権にとって、こうした支持層の期待に応える政策を次々と打ち出すことで、公約を実行しているという印象を与えることが極めて重要であると分析した。
パネリストの報告
招待講演に続いて、本特集の執筆陣の中からラテン・アメリカ政経学会会員である高橋百合子氏(早稲田大学)、内山直子氏(東京外国語大学)、大場樹精氏(獨協大学)、がパネリストとして登壇し、パネルディスカッションが行われた。筆者がその司会を務めた。
メキシコ政治、米墨関係、メキシコ人移民の研究を専門とする高橋百合子氏は、「第2期トランプ政権の移民政策とその影響」と題して報告を行った。高橋氏はまず、トランプ氏が「不法(illegal)移民」と呼ぶ人々について、実際には「正式に登録・許可されていない(undocumented & unauthorized)」存在と捉えるべきであり、当然ながら全員が犯罪者であるわけではなく、登録・許可を得られなかった経緯も多様であると指摘した。
また、民主党の政治的影響力が強く、移民にとって「聖域(sanctuary city)」とされる州や地域を標的に、国土安全保障省(DHS)は傘下の移民関税執行局(ICE)を通じて、強制捜査や逮捕状なしの「ファスト・トラック」拘束、大量の強制送還を進めているという。一方で、不法越境者の数が減少していることから、業務量の減った税関・国境警備局(CBP)