『アルツハイマー病の一族 -病を受け継ぐ遺伝子と医師たちの闘い』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『アルツハイマー病の一族 -病を受け継ぐ遺伝子と医師たちの闘い』


『アルツハイマー病の一族 -病を受け継ぐ遺伝子と医師たちの闘い』
 ジェニー・エリン・スミス 黒木 章人訳 下山 進解説 原書房
 2025年9月 424頁 2,800円+税 ISBN978-4-562-07563-8

 コロンビア北西部メデジン近くの山間で牛を飼っている者たちの中に、その多くが40歳代前後で発病し10年ほどで死ぬ運命を背負う若年性アルツハイマー病(パイサ変異)を遺伝的に受け継ぐ一族がいる。遺伝性は全体で0.5%ほどといわれるが、日本を含む全世界にその家系が散らばっている。山間の調査地はゲリラと武装麻薬組織、政府側が入り乱れて抗争している危険地帯であったが、その一族を継続して検査、解剖し治験のデータを収集することが治療薬の開発につながると、コロンビア・メデジンの大学の神経内科医レストレポは神経科学グループを立ち上げた。アルツハイマー型認知症の成因アミロイドβについては1980年代半ばにすでに解明されて世界的に治療薬の開発が競われ巨額の金が投入され、大規模な臨床試験が試みられているが、未だ開発途上である。
 著者は米国のフロリダとコロンビアに拠点を置いて活躍しているサイエンスライターだが、治験者とその家族まで取材し彼らの機微まで触れたノンフィクション。(巻末に付されたノンフィクション作家・下山進の解説によれば、神経原繊維変化の成分を突き止めたのは、日本の研究者井原康夫であり、アミロイドβ抗体薬を開発したのが日本のエーザイであることなどが誤記、明記されていない。)

〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2025/26年冬号(No.1453)より〕