『エメ・セゼール -「黒人(ネグリチュード)」の発明』
尾立 要子 筑摩書房
2025年10月 345頁 2,100円+税 ISBN978-4-480-01834-2
日本では知る人は少ないが、フランスの多くの知識人層がその著作を知っている現代カリブの最重要知識人エメ・セゼール(1913~2008年)の本格的評伝。フランス海外県マルティニークに生まれ詩人としてデビューし、「黒人(ネグリチュード)」概念を創出して植民地主義を痛烈に批判し、覚醒を促して評価を確立した。中心都市フォール・ド・フランス市長を半世紀以上務め、国会議員も兼任し政治家としても活躍したセゼールを、公文書資料や彼自身への5回のインタビューを基に描き出す。
クレオール語とフランス語の複数言語の中で生きフランス語で詩作したセザールの生い立ちと政治家として出発するまでから始まり、政治家として植民地から海外県になるにあたって文化的同化政策を退け「ネイションとしてのマルティニーク」実現に向けて活動した人生を描くことで彼の活動を高く評価している。著者のセザールとのインタビューの要諦も紹介されていて、彼の信条を聞き出している。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2025/26年冬号(No.1453)より〕