『秘儀 上・下』  マリアーナ・エンリケス | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『秘儀 上・下』  マリアーナ・エンリケス


『秘儀 上・下』

マリアーナ・エンリケス 新潮社(文庫)

宮崎真紀/訳 各2025年10月 I,150円+税 ISBN978-4-10-241061-5・978-4-10-2410-62-2

 

パンパで小麦とマテ茶農園で成功し、北東部のミシオネス州に大きな屋敷を建てたブラッドフォード家は、闇の力を借りアルゼンチンの政財界の裏側で暗躍する教団を司る裏面の顔があった。教団で生贄を捧げる儀式で<闇>を呼びだす霊媒として利用され続けてきたフアンは先天的な心臓疾患を抱え、体調に不安を抱える息子ガスパルも同じ力を有することに気づいて、今回ブラッドフォード屋敷への長距離ドライブに伴う。ガスパルは父親に反発するが、その時代1960~76年は世界各地での米ソ連の冷戦代理戦争や軍事クーデタが起き、アルゼンチンでも1955年まで国家社会主義に基づく統制を続けたペロン時代の後1976~83年の間の軍政下では反体制派と目された市民約3万人が行方不明になったが、1993年にジャーナリストがそれまで起きた不可解な人間消失事件を調べていく中で教団の関わりが示唆され、最後はガスパルが父フアンの意志を継ぐというところで終わっている。

1973年ブエノスアイレス生まれの女流作家が、現実の不安や恐怖を超自然要素を取り入れつつ書いた長編ホラー小説。

〔桜井 敏浩〕