【要旨】
本稿では、2020 年代半ばに「新たな局面」を迎えたインドの対ラテンアメリカ・カリブ(LAC)外交の変容と、その戦略的意義について考察する。
2025年7月、モディ首相がLAC3か国を歴訪し、BRICSサミットにも参加した。このことは、インドの外交指針において同地域が戦略的に重要であるということを再確認させるものであった。
この外交攻勢の背景には、第2次トランプ米政権の発足に伴う国際情勢の不透明化や中国によるLACでの影響力拡大がある。インドの動向は従来の近隣外交の枠を超え 、「 グローバル・サウス」を主導するプレイヤーとなるという野心を反映している。また、インドの対LAC外交は資源確保と市場多角化の両面で、経済外交の質的転換を図る布石であるともいえる。
米国による関税強化が、インドの主要輸出産業である自動車や繊維、医薬品産業に市場転換を余儀なくさせるなかで、LACが代替市場として重要性を増している。本稿では以下の構成で論考を展開する。
まず、独立以降のインドの対LAC外交政策を3つの時期に分けて整理し、その根底にある「積極的非同盟主義」の変容について考察する。
次に、相手国別、品目別の貿易・投資構造の現状を精査し、相互依存の課題と貿易協定(メルコスール、チリ、ペルーなど)交渉の進展についても言及する。さらに、重要鉱物、エネルギー安全保障、食料安全保障、クリーンエネルギー移行や気候変動対策などの具体的な協力分野について論じる。
最後に、両地域間の貿易と投資拡大の阻害要因を特定し、関係深化に向けた政策的処方箋を提示することで、インドが推進する「多角化」戦略の意義を明らかにする。
キーワード:貿易・投資政策、グローバル・サウス、BRICS、南・南協力、非同盟主義
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ラテンアメリカ・カリブ研究所レポート ILAC2026-1 2026 年2月 「インドとラテンアメリカとの関係に新展開」:「経済外交の活性化とその政治的背景」桑山幹夫