メキシコ原産のアガベと呼ばれる竜舌蘭科の芯を蒸し焼きにして作られるスピリッツは、国民酒といってよいメスカルであるが、うち特定の土地で作られたのがテキーラとして世界的に知られるようになっている。同じ起源をもつ蒸留酒について、産地の保護と保証、テキーラの品質管理と定義をめぐるルール、テキーラゆかりの地での農業をめぐる問題、原産地名称の影に隠れたメスカルとメキシコ産スピリッツの未来を調査し、名酒生産のポリティックスを解説している。著者はマイノリティや社会的弱者の視点から食をめぐる問題を研究しているノースカロライナ州立大学教授の社会学者。
テキーラ、メスカルそのものの味や種類などの記述を期待する読者には、本誌2021年春号で紹介した『テキーラの歴史 (「食」の図書館)』(イアン・ウィリアムズ著 原書房 2019年https://latin-america.jp/archives/47824 )を併せ読むことを薦めたい。
〔桜井 敏浩〕
(小澤卓也・立川ジェームズ・中島 梓訳 ミネルヴァ書房 2021年6月 364頁 3,500円+税 ISBN978-4-623-09110-2 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2021年夏号(No.1435)より〕