執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会顧問)
2025年11月13日付けで、米国の人権団体のフリーダムハウスが、
「インターネットの自由度ランキング2025」(Freedom on the Net 2025)を発表した。
この調査は、2011年に開始され、採点の基準は、インターネット及びデジタル・メディアにおける言論・表現の自由度を「アクセス規制」、「コンテンツ規制」、「ユーザー権利の侵害」の3分野の観点から21の質問項目と100以上の詳細質問を設定・調査し、0-100ptsでスコア化し評価している。70点以上が自由度「フリー」の国々、40点から69点までの国々は、「部分的にフリー)、39点以下の国々は「フリーでない国々」:と分類されている。今回の調査は、昨年と同様、世界72カ国・地域を対象に行われた。それによると18カ国・地域(昨年度19)が「自由」、32カ国・地域(昨年度32)が「部分的に自由」、22カ国・地域(昨年度21)が「不自由」となった。
自由度フリーの国は、下記のアイスランドからジョージアまでの18ヶ国である。フリーでない国は、点数の低い国順にすると中国、ミヤンマー9点、イラン13点、ロシア17点、ベラルーシ20点、キューバ21点、ベトナム22点、サウジアラビア25点、ベネズエラ26点、スーダン、パキスタン27点、UAE、エジプト28点、ウズベキスタン29点、エチオピア、バーレーン30点、トルコ31点、ルアンダ、アゼルバイジャン34点、カザフスタン37点、ニカラグア38点、タイ39点の22カ国である。旧ソ連系が5ヶ国、イスラム系が8ヶ国、アジア系が5ヶ国、アフリカ系1ヶ国、ラテンアメリカ系3ヶ国となっている。総じて権威主義的な国が多いと言えよう。残りはすべて部分的にフリーの国である。
フリーダムハウスの下記のコメントは興味深いので引用する。インターネットを使用する際には考慮すべき点である。
*55億人以上がインターネットを利用できる。
*81%は、政治・社会・宗教問題に関する投稿を理由に個人が逮捕または投獄された国に住んでいる。
*70%は、オンライン活動のために個人が攻撃または殺害された国に住んでいる。
*70%は、当局が親政府派のコメント投稿者を利用してオンライン上の議論を操作している国に住んでいる。
*69%は、政治的、社会的、宗教的なコンテンツがオンライン上でブロックされている国に住んでいる。
*61%は、ソーシャルメディアプラットフォームへのアクセスが一時的または恒久的に制限されている国に住んでいる。
*52%は、当局がしばしば政治的な理由でインターネットやモバイルネットワークを切断している国に住んでいる。
表1 インターネットランキング自由度2025の主要国のランク
| 国 名 | 世界
順位 |
合計点と自由度の状況
100点満点 |
アクセスへの障害25点満点 | 内容に対する制約 35点満点 | 個人権利の侵害 40点満点 |
| アイスランド | 1(1・1) | 94(94・94) | 25(25・25) | 34(34・34) | 35(35・35) |
| エストニア | 2(2・2) | 91(92・93) | 25(25・25) | 31(31・31) | 35(36・37) |
| チリ | 3(3na) | 87(86・na) | 24(24・na) | 32(32・na) | 31(31・na) |
| コスタリカ | 4(5・4) | 86(85・85) | 22(21・21) | 32(32・33) | 32(31・32) |
| カナダ | 5(3・3) | 85(86・88) | 22(23・23) | 32(32・33) | 31(31・32) |
| オランダ | 6(6・na) | 84(83・na) | 24(24・na) | 30(2・na) | 30(30・na) |
| 台湾 | 7(7・6) | 79(79・78) | 24(24・24) | 29(29・29) | 26(26・25) |
| 日本 | 8(8・7) | 78(78・77) | 22(22・22) | 30(30・29) | 25(26・26) |
| フランス | 9(11・9) | 76(76・76) | 23(22・23) | 29(29・29) | 24(25・24) |
| 英国 | 9(8・5) | 76(78・79) | 24(24・21) | 28(29・30) | 24(25・25) |
| オーストラリア | 11(11・9) | 75(76・76) | 23(23・23) | 28(28・28) | 24(25・25) |
| ドイツ | 12(10・7) | 74(77・77) | 23(23・23) | 27(28・28) | 24(26・26) |
| イタリア | 13(14・13) | 74(75・75) | 22(21・21) | 28(29・29) | 24(25・25) |
| 南ア | 14(15・14) | 73(74・73) | 19(19・17) | 28(29・29) | 26(25・27) |
| 米国 | 15(11・9) | 73(76・76) | 20(21・21) | 28(29・30) | 25(26・25) |
| アルメニア | 16(15・16) | 72(74・72) | 20(20・19) | 27(29・28) | 24(25・25) |
| アルゼンチン | 17(18・14) | 71(71・73) | 20(19・19) | 27(27・28) | 24(25・26) |
| ジョージア | 18(15・9) | 70(74・76) | 19(19・19) | 26(28・29) | 25(27・28) |
| 韓国 | 21(21・18) | 65(66・67) | 21(22・22) | 23(23・24) | 21(21・21) |
| 中国 | 71(71・70) | 9(9・9) | 7(7・7) | 2(2・2) | 0(0・0) |
注:本調査には順位が書かれていないが、点数によって順序を記した。 ( )内は、2024/2023年の調査結果
「ラテンアメリカ諸国の概要」
調査対象国72か国の内、ラテンアメリカ諸国の対象国は、下記表2のとおり、10カ国である。「自由度フリーの国」は、チリ、コスタリカ、アルゼンチンの3ヶ国(前回3ヶ国)であり、チリの世界3位、コスタリカの4位は注目に値する。「部分的にフリーな国」は、ブラジル、コロンビア、エクアドル、メキシコの4ヶ国(前回5ヶ国)、「フリーでない国」は、ニカラグア、ベネズエラとキューバの3ヶ国(前回2ヶ国)である。ニカラグアが、「部分的にフリーな国」から「フリーでない国」になった。ラテンアメリカの主要国であるペルー、ボリビア、ドミニカ共和国、グアテマラ、パラグアイ、ウルグアイ等は調査の対象国になっていない。
24年調査と比較して、得点で上昇した国は、コスタリカ、アルゼンチン、ブラジル、エクアドル、キューバの5ヶ国が各1ポイント、下落した国は、ベネズエラ7ポイント、ニカラグア3ポイント、コロンビア、メキシコが各1ポイントとなっている。チリは変化なしであった。
この調査を見ると、国別の動向、問題点、課題などが紹介されているので、ご関心のある方は、ご参照ください。
ラテンアメリカ調査対象国10カ国のインターネット自由度ランキング2025
| 国 名 | 世界
順位 |
合計点と自由度の状況100点満点 | アクセスへの障害25点満点 | 内容に対する制約 35点満点 | 個人権利の侵害 40点満点 |
| Chile | 3(3・na)* | 87(86・na) | 24(24・na) | 32(32・na) | 31(36・na) |
| Costa Rica | 4(5・4) | 86(85・85) | 22(21・19) | 32(32・33) | 32(32・31) |
| Argentina | 17(18・14) | 71(71・73) | 20(19・19) | 27(27・28) | 24(25・26) |
| Brazil | 21(22・23) | 65(65・64) | 22(20・20) | 24(25・23) | 19(20・21) |
| Colombia | 23(22・21) | 64(65・65) | 19(19・19) | 25(25・24) | 21(21・21) |
| Ecuador | 25(26・23) | 63(63・64) | 17(18・18) | 24(24・23) | 22(21・22) |
| Mexico | 29(28・25) | 61(61・62) | 18(18・18) | 25(25・25) | 18(18・19) |
| Nicaragua | 52(49・48) | 38(41・42) | 11(11・11) | 14(16・17) | 13(14・17) |
| Venezuela | 64(57・57) | 26(30・29) | 8(8・7) | 9(11・11) | 9(11・11) |
| Cuba | 67(68・67) | 21(20・20) | 5(5・4) | 10(9・9) | 6(6・7) |
注: ( )内の数字は、(24年・23年)の数字。チリは、2023年の調査対象ではなかった。
過去の同様の調査は下記の通り。
以 上