『チェ・ゲバラとキューバ革命 -ポスタルメディアで読み解く』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『チェ・ゲバラとキューバ革命 -ポスタルメディアで読み解く』


  『リオデジャネイロ歴史紀行』 (2016年。https://latin-america.jp/archives/26539 )の著書もあり、切手や絵はがき等郵便資料からその国の歴史、文化遺産、国際関係などを解明する「郵便学」を提唱する著者が、キューバ革命とチェ・ゲバラを、ポスタルメディアを手懸かりに読み解こうとした大部な解説書。
 没後の周年を機にゲバラの出身国アルゼンチン、かつて彼と戦い処刑したボリビアなどからゲバラの肖像切手が発行されているが、2017年の50周年にアイルランド郵政が出したゲバラ切手は、マルクス主義革命家を肯定的に説明したことから、同国内のみならず米国の亡命キューバ人社会からも抗議がなされた。
 切手は発行国の史観、主張、宣伝・プロパガンダを表現するものであり、その図柄のほか、印刷・紙質や消印、送達ルートなど様々な情報をもたらしてくれるので、そこからキューバ革命・革命後の体制やゲバラの肖像から実にいろいろなことが判ってくる。
 本書は革命以前のキューバ、革命を志すカストロとゲバラの出会い、革命戦争、革命政権樹立後キューバ国籍を得たゲバラが政府使節団を率いて外国歴訪し、工業相としての経済建設に励み、米国との対立激化の中で1964年の国連総会での演説、アフリカ歴訪を経て帰国後カストロへ「別れの手紙」を残してコンゴ、ボリビアに赴きゲリラ戦で倒れるまでの歴史を辿り、最後にゲバラ亡き後の「英雄的ゲリラ」像のイメージの変遷を、ゲバラが足跡を残した世界各地の切手等郵便資料により多岐に紹介しながら述べている。単に郵便切手とゲバラの記述に留まらない、戦後の世界を俯瞰する視点での現代史研究としても一読に値する。

〔桜井 敏浩〕

(内藤 陽介 えにし書房 2019年2月 694頁 3,900円+税 ISBN978-4-908073-52-6 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2019年夏号(No.1427)より〕