『大航海時代の日本人奴隷 アジア・新大陸・ヨーロッパ 増補新版』 ルシオ・デ・ソウザ - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『大航海時代の日本人奴隷 アジア・新大陸・ヨーロッパ 増補新版』  ルシオ・デ・ソウザ


日本の戦国時代に日本人が奴隷として南蛮商人にマカオ、ゴア、マニラ等に連れ出され、遠くメキシコ、ペルー、アルゼンチン、さらにポルトガル、スペインまで行っている記録が発見されている。人身売買に関する南蛮貿易史料は乏しいが、1577年に豊後(大分県)で生まれた一日本人が改宗ユダヤ商人一家に長崎で奴隷として買われマニラに渡り、さらに他の日本人奴隷と共にメキシコへ移ったとの記録がある。メキシコでは1590年以降アカプルコに上陸したアジア人の自由民・奴隷の公的な記録や訴訟、結婚許可申請などに断片的は日本人がいたこと、ペルー、アルゼンチンにも1600年前後に日本人の存在を示す史料が遺されていることを明らかにしている。

海外へ出た日本人奴隷存在の実態について、史実を解明した実証研究の嚆矢といえる本書の初版(『ラテンアメリカ時報』2018年夏号で紹介 https://latin-america.jp/archives/31718 )は、ポルトガルでアジア学研究者の東京外国語大学特任准教授が出版し、夫人が訳して取りまとめ2017年に中公叢書から出版された初版に、省略したイエズス会と奴隷貿易との関係章を補論として追加したものである、「奴隷的」な労働は地域や歴史を問わず、移住、出稼ぎの中に常に存在していて現代においても社会問題の基層と大いに関係があると、訳者は指摘している。

〔桜井 敏浩〕

(岡美穂子訳 中央公論新社(中公選書) 2021年1月 253頁 1,500円+税 ISBN978-4-12-110116-7)