『チーズづくりの民族誌 -ペルー山村の暮らしと市場をつなぐ「計算」と「配慮」』 古川 勇気 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『チーズづくりの民族誌 -ペルー山村の暮らしと市場をつなぐ「計算」と「配慮」』  古川 勇気 


 アンデス地域ではリャマやアルパカが家畜として利用されてきたが、搾乳し乳を利用する文化はなかった。しかしスペイン人が持ち込んだ牛や山羊の乳利用や乳製品が作られるようになり、農民の中でも酪農業が地域に根付いた生業とする者が出てきた。アンデス高地のペルー北部カハマルカ県では、生乳の輸送コストや保存を考慮し、近年チーズ生産が増加している。著者は東大大学院博士課程で文化人類学を専攻した少壮研究者で、フィールド調査によって、アンデスの山村を経済人類学の観点から、カハマルカ県酪農業とチーズ流通網、チーズ生産者の食生活、農民との交換活動、社会関係、農村内における市場経済の影響、村内での利益追求と協調意識などを調査し、分析することによって社会と市場の重なりを探求し、具体的な酪農農民の経験を聴取し、チーズ生産者の経済戦略を明らかにしようとしたものである。
 本書は著者の『ペルー山村のチーズ生産者-暮らしの中の経済戦略』として出版された(風響社 2015年 https://latin-america.jp/archives/18241 )のほか既発表論文、東大に提出した博士学位論を大幅に加筆・修正したもの。

〔桜井 敏浩〕

(大学教育出版 2020年11月 249頁 4,400円+税 ISBN978-4-86692-103-7 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2021年春号(No.1434)より〕