『宣教と適応 -グローバル・ミッションの近世』 齋藤 晃編著 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『宣教と適応 -グローバル・ミッションの近世』  齋藤 晃編著


 15世紀末以降の大航海時代にポルトガル、スペインをはじめとする西欧の本格的海外進出が始まり、とりわけ「アメリカの発見」を契機にカトリック教会の宣教が新大陸で進められたが、中でも1540年に設立が認可されたイエズス会の活動はペルー、メキシコへは1568年以降と出遅れたもののその後は目覚ましいものがあった。彼らは布教のために現地先住民社会に飛び込み言語を習得して、彼らの伝統文化、信仰、慣習をキリスト教にとって中立的と本質に反するものの境界を見極め適応しようと努めた。もちろんそこにはジレンマもあり、アンデスでの布教の現場において適応の精神を開花させようと尽力した者もいたが、インディアスの住民を文字の使用で区分し差別する階層論者や反適応論者との意見の相違があった。

 本書は国立民族学博物館で行われた「近世カトリックの世界宣教と文化順応」共同研究の成果であり、編者は『魂の征服 -アンデスにおける改宗の政治学』(平凡社 1993年)、『南米キリスト教美術とコロニアリズム』(岡田裕成大阪大学教授と共著、名古屋大学出版会 2007年 https://latin-america.jp/archives/5581 )など、アメリカ大陸での宣教の歴史を専門としてきた国立民族学博物館教授。

〔桜井 敏浩〕

(名古屋大学出版会 2020年2月 554頁 6,800円+税 ISBN978-4-8158-0977-5 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2022年春号(No.1438)より〕