ペルー生まれ生後間もなく祖国チリに戻って育ち、『精霊たちの家』(河出文庫 2017年)で一躍世界的に知られるようになった作家の長編小説『エバ・ルーナ』(白水社 2022年7月 https://latin-america.jp/archives/56962)のいわば姉妹編、それからこぼれ落ちた話しを集めた短編集で、登場人物の何人かは共通している。同じ訳者によって1995年に国書刊行会から出版されたものの再刊。23編の短編はいずれも愛をテーマにし、様々な形をとって現れる愛の姿を、あたかも無意識に歪曲したり付け加えられる神話のように、愛の神話のいろいろなヴァリエーションを繰り広げている。ラテンアメリカ文学には難解なものが少なからずあるが、彼女の小説はそうではない。
〔桜井 敏浩〕
(木村榮一・窪田典子訳 白水社(白水Uブックス 243) 2022年11月 349頁 2400円+税 ISBN978-4-560-07243-1)