1973年メキシコ生まれの作家で、『赤い魚の夫婦』(2021年 現代書館 https://latin-america.jp/archives/50669 )などで現代メキシコを代表し、ラテンアメリカで期待の作家の短編集。パリ、メキシコシティ、欧州の架空の都市など舞台は多彩で、うち「盆栽」はムラカミという名の園丁が登場する東京が舞台になっている。同じく短編集の『赤い魚の夫婦』は生き物が鍵だったが、本編は登場人物の社会的地位や功績といった特性とは別の内面の特異性を排除するのではなく、日常と地続きなものとして賛美し秘められた部分に分け入っている。スペイン語圏の女性作家の作品紹介がやっと日本でも翻訳が増えてきた中での全6編の短編集。
〔桜井 敏浩〕
(宇野和美訳 現代書館 2022年12月 144頁 2,000円+税 ISBN978-4-7684-5931-7)