『カリブ海の旧イギリス領を知るための60章』 川分 圭子・堀内 真由美編著 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『カリブ海の旧イギリス領を知るための60章』 川分 圭子・堀内 真由美編著 


カリブ海域の大小の国々については、エリアスタディーズシリーズには既に『カリブ海世界を知るための70章』(国本伊代編著、2017年https://latin-america.jp/archives/24520)が刊行されているが、本書は英国近世・現代史研究者が編著者となって、旧英領の中米のベリーズ、南米のガイアナを含む現在12の独立国と英領に留まる6地域の英連邦加盟国に絞って取り上げたもので、CARICOM(カリブ共同体)の構成国ともほぼ重複する。
カリブ海英語圏の「イギリス性」に焦点を当て、当該国地域の状況のみならず、英国に在住するカリブ出身者の状況、現代英国が過去のカリブ支配とどう向き合っているか、カリブの文化や人々が英国に与えた影響を、第Ⅰ部では地理的構成から整理し、歴史的経緯を英領になっていった征服と開発の過程、カリブに英国的世界が移設されたかを概観し、第Ⅱ部は英領カリブの経済の中心だった砂糖生〔『ラテンアメリカ時報』2023年秋号(No.1444)より〕産の盛衰、奴隷貿易と様々な人種の労働者の流入、支配体制の変化を、第Ⅲ部は英語、クレオール語、カリブ標準英語の併存と使い分け、第Ⅳ部は脱植民地化と目指した連邦での独立が破綻した歴史を、第Ⅴ部は第二次大戦後に英国に渡ったカリブ移民の生活と英国へのインパクトを、第Ⅵ部は現代に至るまでのレイシズムの問題とその社会・文化現象をポピュラー音楽、詩、文学を中心に、第Ⅶ部はカリブと英国の狭間で生きる相互の移住者達の苦悩を、終章第Ⅷ部はカリブ出身者が故郷で集う機会となる各地のカーニバルとロンドンで8月に開催されるカーニバルを紹介することで、旧英領カリブという文化的地域的枠組みを日本社会に認識してほしいという意図でまとめられている。本国英国に関する記述が3分の1近くを占める、このシリーズでは異色の意欲作。

 〔桜井 敏浩〕

(明石書店 2023年9月 388頁 2,000円+税 ISBN978-4-7503-5632-7)
〔『ラテンアメリカ時報』2023年秋号(No.1444)より〕