『フリーダ・カーロ作品集』
堀尾 眞紀子 東京美術
2024年10月 192頁 3,600円+税 ISBN978-4-8087-1278-5
メキシコの女流画家フリーダ・カーロ(1907~54年)は18歳の時に学校からの帰途乗っていたバスが市電と衝突し、手すりが子宮を貫通、脊髄、骨盤、右足等の骨折という重傷を負い、繰り返しの手術と痛みに生涯苦しめられた。その入院の後初めて絵筆を執り多数の自画像をはじめとする絵画を遺した。22歳の時に壁画運動で活躍している画家ディエゴ・リベラの3番目の妻となったが、度々の流産と夫の妹との不倫に悩まされ、また自身も米国の画家イサム・ノグチ、ソヴィエトの政争でスターリンに敗れ亡命してきたトロツキー、写真家のニコラス・ムライとそれぞれ一時期親密になり、32歳でリベラと正式に離婚したが、翌年再婚している。美術界でのリベラへの高い評価とともにフリーダの絵画もアート展、個展が開催されるなど次第に評価が高まったが、1954年7月に米国のグアテマラ内政干渉へのデモ行進に車椅子で参加した10日後に生家でもあり最後の15年間住み続けた「青い館」で47歳の生涯を閉じた。「青い館」はリベラの遺志でフリーダ・カーロ記念館として公開されている。
本書はフリーダ・カーロの克明な伝記と86の作品と彼女の人生の様々な瞬間の写真、年譜、作品リストで構成される完璧と言ってよい紹介書である。著者は文化学園大学名誉教授。東京藝術大学を卒業後1987年にメキシコシティでフリーダの作品に魅せられ独自取材を重ね、『フリーダ・カーロ -引き裂かれた自画像』(中公文庫)、『フリーダ・カーロの日記 ―新たなまなざし』(冨山房インターナショナル 2023年https://latin-america.jp/archives/60106 )の解説など多くの著作がある。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2024/25年冬号(No.1449)より〕