執筆者:硯田一弘(アディルザス代表取締役)
月曜日にスペイン・ポルトガルで大規模な停電が発生したことは、日本でも大きく報道されました。このニュースについて検索したところ、なんとカタルニア語(Catalan)でのニュースサイトでの報道を発見しました。
https://beteve.cat/societat/apagada-general-espanya-barcelona-tall-llum-28-abril-2025/
ちなみに、スペインではEspanol=Castellanoという中心言語をはじめとして、東部海岸地域のカタルニア語・北部フランス国境のバスク語(Vasco)・ガリシア語(Gallego)・アラン語(aranés)の五言語が存在します。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%A8%80%E8%AA%9E
これらの言語はかなり個性的で、日本の方言などよりも通じにくい単語も多く、スペイン国内の新幹線に乗るとこれら5言語で案内表示が行われます。またスペイン国会では各言語での同時通訳も採用されているという話を聞いたことがあります。
ラテンアメリカの多くの国で話されているのは、上の図でいうエスパニョールで、地域によって発音やイントネーションなどに違いはありますが、スペイン国内のように同時通訳が必要なほどの違いはありません。その意味では、汎用的なスペイン語を学習するのも南米で行った方が合理的とも考えられます。
これまでも何度も書いてきましたが、スペイン語は母音が5音で発音がシンプルなので、日本人には学習しやすい言語と言えます。世界的には英語が最も汎用的と言われていますが、同じ英語を公用語とする米国内でも、南部ジョージア州などでは極めて難解な発音ですし、豪州やインドの英語も聞き取りにくいと言われています。
また、英国の中でも中心言語であるEnglishとスコットランド語(Scots)・ウェールズ語(Welsh)等の地域言語が存在し、英王室を描いたNetflixのドラマCrownでも、チャールズ国王が皇太子時代にPrince of Wales(ウェールズ公)としてウェールズ大学に短期留学してWales語を学ぶ様子が描かれていますが、このシーンで話される言語は英語話者にも字幕が必要な独特の言語です。
https://www.britishcouncil.jp/studyuk/living/information#:~:text=%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%A8%80%E8%AA%9E%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E5%85%A8%E5%9C%9F,%E3%81%8C%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%81%AE%E9%80%9A%E8%B2%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
今週木曜日、5月1日はメーデー(May Day)で世界の多くの国と地域で労働者の祝日ということで休業日でした。南米ではどこでも祝日、あらためてその他の国々について調べてみると、なんと休日でない国の方が少ないことが判りました。
ということで、今週は言語や習慣の共通性や多様性について考えさせられる一週間になりました。
今回ご紹介する単語claveは鍵という意味ですが、錠前をかけるための物理的なカギはLlave(ジャーベ)という言い方の方が一般的。claveというのは謎解きの鍵、というような抽象的なカギのことを指します。もうひとつ、tecla(テクラ)という表現もありますが、これは錠前や謎を解くカギではなく、主に鍵盤楽器の鍵の意味で使われます。鍵盤は英語でキーボード(Key Board)ですが、スペイン語やポルトガル語ではtecladoと言います。
先週葬儀が行われたフランシスコ教皇の後任を決める儀式、教皇選挙=ConClaveが来週水曜日に開催されることが正式に発表されました。
コンクラーベというのは、バチカン宮殿の中のシスティーナ礼拝堂に世界中から集まった枢機卿を集め、選挙期間中は外界と遮断するために内側からカギをかけて行うことからCon Clave(鍵と共に)という名称の儀式になったようです。
https://www.cbcj.catholic.jp/faq/conclave/
多くの報道で伝えられている通り、カトリック教会内では旧来の規律を重んじる保守派グループと、信者の大多数を占める貧困層によりそう姿勢のリベラル派グループとに分かれていて、次期選挙でどちらのグループが多数の票を得ることになるのか?が大きな焦点になっています。
こうした流れを理解するには、現在上映中の映画『教皇選挙』だけでなく、2019年にNetflixで発表され、現在も視聴可能な『二人のローマ教皇』をご覧になると、教会が抱える問題の一端を理解することが出来ます。
https://www.youtube.com/watch?v=WJHFnRljkaA
ウクライナやガザ地区での戦争、トランプ関税に端を発する世界経済の混乱も含め、世界人口の6人に一人が信仰しているとされるカトリック教会の方向性を決める人物がどのような考え方の人物になるか、というのも近未来の世界情勢を見据える為の重要なカギとなることは間違いありませんから、選挙の行方にもご注目ください。
もうひとつ、南米の近未来を占うカギ。それは米国が乱心する間に中国がどのように関係強化を図ってくるか?ということ。
今週はブラジリアでBRIC安全保障会議が開催され、王毅外交部長が参加し、ルラ大統領との個別面談にも臨みました。
http://jp.xinhuanet.com/20250502/8787129266394d91983ea4737479eb7c/c.html
米国の顔色をうかがってばかりいると、世界の食糧庫である南米を取られて益々食糧安全保障が脅かされることになりかねません。世界中への目くばせをお忘れなく。
Con Clave二日目の8日木曜日、新しいローマ教皇が選出されました。
日本でも大々的に報道されたので、多くの皆さんが御存知ではありますが、シカゴ生まれの米国人、Robert Francis Prevost枢機卿がLeo14世として教皇のポストに選ばれた訳です。初の米国出身者として紹介されていますが、22年に亘る奉仕の場となったペルーでは、「ペルー人の心を持った教皇の誕生」ということで大フィーバーとなっているようです。 https://www.reforma.com/un-papa-de-corazon-peruano/ar3000898
https://elpais.com/america/2025-05-10/prevost-el-papa-peruano-misionero-y-politico.html
↑この映像では、レオ14世が前任のフランシスコ教皇の路線を踏襲しつつも、儀式での服装などでも保守派への配慮をにじませる様子がみられ、14億人信者の頂点に立ちながらバランスを保つことの難しさが理解できます。
新教皇として執り行う最初のミサが次の日曜日18日にバチカンで開催されます。
https://www.vaticannews.va/ja/pope/news/2025-05/18-maggio-messa-inizio-pontificato-papa-leone-xiv.html#:~:text=%E3%83%AC%E3%82%AA14%E4%B8%96%E3%81%AE%E6%95%99%E7%9A%87%E8%81%B7%E3%81%AE%E9%96%8B%E5%A7%8B%E3%82%92%E7%A5%9D%E3%81%86,%E9%83%A8%E3%82%88%E3%82%8A%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%82
パラグアイのペニャ大統領は、19日に予定されている関西大阪万博におけるパラグアイのナショナルデー日程をずらすことなく、18日バチカンでのミサにも出席すべくスケジュールの再調整を行っています。
https://www.ultimahora.com/pena-organiza-vuelos-para-visitar-al-papa-sin-suspender-su-viaje-a-japon
ペルーの北部チクラヨを中心に地道な活動を続けてきた新教皇も、パラグアイの若き大統領も、過酷な日々が続くことになる今月、先ずは健康に気を付けて活動して頂きたいと心からお祈り申し上げます。
トランプ大統領二期目初の外国訪問となった中東歴訪も終わり、サウジアラビアやカタール・UAEの諸国から投資の話は引き出したものの、並行して調整を試みたウクライナ・ロシア間の調停は不調に終わり、イスラエルによるガザ攻撃は激化することとなってどちらの紛争も行き詰まりからの脱却は困難な状況になっています。
先週も書きましたが、この週末はパラグアイのペニャ大統領も外遊に出発しました。
先ずローマを訪問して、葬儀に参列できなかった先代教皇フランシスコの墓前に額づき、日曜日に新教皇レオ14世の就任ミサに参加、その直後に日本に向かって月曜日の関西大阪万博のパラグアイナショナルデーのイベントに参加することになっています。
実は4月26日のフランシスコ前教皇の葬儀の際は、ペニャ大統領は米国ユダヤ人協会の招待で訪米しており、パラグアイへの投資案件の行事などに参加していた為に、葬儀に参加できなかったのですが、このことが人口の太宗を占めるパラグアイにおいて問題視されていました。今回も19日月曜日に関西大阪万博のイベント出席が3月から確定していたものの、直前の18日が新教皇の就任ミサとなって、超タイトなスケジュールながらローマ訪問を実現することで国内批判の窮地を脱することができました。
また、今回の訪日は、数少ない国家元首のナショナルデー参加ということで、盛り上がりに欠いて窮地に立たされている主催者の万博協会にとっても重要なものと位置付けられ、日本政府からも両国関係の格上げを含む重要テーマを首脳会談で話し合うよう日程調整がなされている旨がNHKで報道されました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250514/k10014805921000.html
今日の言葉impasseは、英語でもポルトガル語でも同じ単https://www.ultimahora.com/pena-reconoce-impasse-en-la-firma-de-acuerdo-operativo-de-yacyreta
このニュースでは、パラグアイと隣国アルゼンチンとの二国間事業であるYacyreta水力発電所の懸案解決交渉が行き詰まっていることを報じています。
過去の経緯については、2023年11月の以下記事をお読みください。
https://latin-america.jp/archives/60299
今日のNHK特集では、トランプ関税問題が日本企業に及ぼしている影響とその打開策について、具体的な企業の動きや識者の見解が示されていましたが、自国第一主義を唱える米国は、世界とのデカップリングという結果を招いているという中国高官の意見が印象的でした。もうひとつ、今週はウルグアイの元大統領Jose Mujicaさんが逝去されました。世界一貧しい大統領と呼ばれると、モノを持たないことが貧しいということではなく、モノを欲しがる心の在り方が貧しさである、というムヒカ氏の主張は、中東訪問の御土産で提供されたジャンボジェットに相好を崩す米国大統領に改めて聞かせたい名言です。
https://www.lanacion.com.py/mundo/2025/05/14/el-mundo-llora-la-muerte-de-pepe-mujica-adios-amigo/
コロナ禍の最中にムヒカさんに面談を申し込んで実現した日本の若者達の映像をご参考までに添付しますので、是非ご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=0TvVGftkYnI&t=0s
日本の明治維新の頃、大国ブラジルとアルゼンチンとの間で外交的に厳しい状況に置かれていたウルグアイを救うべく手を差し伸べたパラグアイが、ウルグアイでの政権交代で窮地に立たされ、三国を相手に戦争をすることになり、当時の成人男性の九割が戦死した話は、その後のパラグアイの立ち直りと今日の経済的自立を語る上で欠かせない歴史上の出来事ですが、台湾を巡って対立する中国と米国とのはざまで如何なる動きをすべきか?という今日的課題の方向性を占う上でも、是非知っておくべき史実です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%82%A2%E3%82%A4%E6%88%A6%E4%BA%89
明日の万博パラグアイ・ナショナルデー、関西方面の方、是非御運び下さい。
日本製鉄によるUS Steel買収に関して前向きな動きがみられたとか、失言大臣の更迭でコメの値段が下がりそうというニュースで盛り上がった今週の日本ですが、先にもお知らせした通り、今週月曜日は関西万博におけるパラグアイ・ナショナルデーであったために、ペニャ大統領が訪日し、万博会場や広島原爆公園への訪問のほか、首相官邸でのトップ会談や各種業界関係者との経済懇談などを精力的にこなしました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250521/k10014812801000.html
また、台湾と共催のレセプションでは、国交を維持するパラグアイだけでなく、中国からの脅威感を共有する日本にとっても三国の協調が重要であるとのメッセージを発信していました。
https://japan.focustaiwan.tw/politics/202505230007
https://www.lanacion.com.py/politica/2025/05/23/pena-refuerza-lazos-con-aliados-clave-como-taiwan-y-japon/
また、日本の次にペニャ大統領が訪問したシンガポールでは牛肉・豚肉・鶏肉の輸入に関する合意が形成されたことが大きく報じられています。
シンガポールの総輸入額は約4千億ドル、そのうち畜産物の金額は35億ドル、牛肉・豚肉・鶏肉の合計で1億ドルで、多くはブラジルから輸入されていますが、米国産はブラジルに次ぐシェアを有していますが、これが徐々にパラグアイ産に置き換えられるのかも知れません。
トランプ関税の影響で、中国による輸入量が減ることが懸念される米国産農産物ですが、自動車輸出の条件緩和の反対条件として米国産農産物の輸入圧力が強化される懸念が強まる日本ですが、中国に次ぐ高い関税率を提示されているアジア諸国では、今回の関税問題が沈静化しても、米国への不信感が払しょくされることはなく、結果として食糧のような重要物資に関しては非米国産を指向する動きが出てくるでしょう。そうなると、米国から日本へ農産物輸出圧力は益々強くなるでしょう。
また、トランプ政権によるハーバード大学留学生追放処置も今週のニュースですが、今日のベネズエラ発ニュースと重なるイメージがあります。
それが、この野党指導者に対する弾圧です。
異なる意見を完全に排除しようというベネズエラ政府の手法は、表向き彼らを批難している米国政府によってコピーされていると言っても過言ではないでしょう。
日本でも指導者が変わったことでコメの値段が劇的に下がる、との期待感があるかも知れませんが、そもそも現在の政府買い上げ価格の水準では生産者はコメを作り続けることが出来なくなるということもシッカリと消費者に周知して、人気取りの為だけの安売りを回避する必要があることも理解してもらいたいと思います。
以 上