執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会顧問)
このほど、「大阪関西万国博覧会に見るラテンアメリカ・カリブ海諸国のパビリオンの写真集」を協会のホームページの「投稿欄」の「フォト便り」にアップした。今年の6月と7月に、「ミラノ万国博覧会に見るラテンアメリカ主要国のパビリオンの写真」と「上海万国博覧会に見るラテンアメリカ・カリブ主要国のパビリオンの写真」を、2022年4月に「ドバイ万国博覧会に見るラテンアメリカ・カリブ海諸国のパビリオンの写真集」を掲載しているので、これによって、2010年上海万国博覧会、2015年ミラノ万国博覧会、2021年のドバイ万国博覧会、2025年の大阪・関西万国博覧会という4つの登録博覧会(従来の大型一般博覧会)をカバーしたことになる。これをきっかけに、過去4回の登録博覧会とラテンアメリカ・カリブ海諸国との関わりを簡単にレビューしてみよう。
「ラテンアメリカ・カリブ海諸国の過去4回の登録博覧会に対する取り組み」
下記の表は、2010年上海万博から直近の大阪関西万博までの4回の登録博覧会へのラテンアメリカ・カリブ海諸国33カ国の参加状況である。ドバイ万博の場合、1国1パビリオン制度を取っていたため、すべて単独館とした。また愛・地球博は、当初認定博であったが、途中で登録博に変更されたため、すべて合同館とした。
「ブラジル」
ブラジルは、過去4回の登録博には、すべて単独館で出展している。ようやく南米最大の国、BRICSの雄として自覚し始めた感がある。しかし、それ以前の2005年愛・地球博、韓国での1993年太田博(認定博)、2012年の麗水博(認定博)は不参加であり、熱心度にばらつきがみられる。一方、2020年万博には、主催国として立候補したが、最初の投票で敗れ、ドバイに決定した。
「チリ」
チリも過去4回の登録博で、単独館を建設している。チリは、セビリャ万博では、木造の美しいパビリオンを建設し、南極の氷などを展示し、人気を集めたが、その後の2000年ハノーバー博、2005年の愛・地球博は不参加であった。
「コロンビア」
コロンビアも過去4回の登録博で、単独館を建設している。コロンビアは1992年セビリャ万博では、合同館であったが、2000年ハノーバーでは、単独館を建設した。愛・地球博は不参加であった。
「ペルー」
ペルーは、2015年ミラノ万博は不参加であったが、3回の直近登録博では、単独館を建設している。1992年セビリャ万博と2005年愛・地球博では、合同館、2000年ハノーバー博は不参加であった。
「メキシコ」
メキシコは、万博のパビリオンでのプレゼンテーションは素晴らしいものであるが、2025年大阪・関西万博では、財政的理由で不参加になった。それ以前の3つの登録博では、単独館を建設している。セビリャ万博でもハノーバー万博でも単独館であった。また2010年の万博候補として、ケレタロ市が立候補したが、敗退した。
「アルゼンチン」
アルゼンチンもメキシコと同様、財政的理由で、今回の大阪・関西万博は不参加となったが、それ以前の3回の登録博では単独館を建設した。セビリャ万博、ハノーバー万博、愛・地球博では、合同館であった。アルゼンチンは2023年の国際博(認定博)の開催都市に選ばれたが、財政的理由により取りやめることになった。
「その他単独館が2回の国」
過去4回の登録博で単独館を2回建設した国は、ベネズエラ、パナマ、コスタリカ、エルサルバドル、ウルグアイの5ヶ国である。
「単独館であれ合同館であれ、過去4回の登録博にすべて参加した国」
ウルグアイ、キューバ、グアテマラ、グレナダ、コロンビア、チリ、ドミニカ共和国、ハイチ、ブラジル、ボリビアの10ヶ国。
「単独館であれ合同館であれ、過去3回の登録博に参加した国」
アルゼンチン、アンテイグア・バーブーダ、エルサルバドル、ガイアナ、スリナム、セント・ビンセント・グレナデイーン、セントクリストファー・ネービス、セントルシア、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、パラグアイ、バルバドス、ベネズエラ、ペルー、ホンジュラス、メキシコの16ヶ国 以 上
表1 過去4回の登録博へのラテンアメリカ・カリブ海諸国の参加形態
| 国名 | 上海万博 | ミラノ万博 | ドバイ万博 | 大阪関西万博 |
| アルゼンチン | 単独館 | 単独館 | 単独館 | 不参加 |
| アンテイグア・バーブーダ | 合同館カ | 不参加 | 単独館 | 合同館D |
| ウルグアイ | 単独館 | 合同館 | 単独館 | 合同館C |
| エクアドル | 単独館 | 合同館 | 不参加 | 不参加 |
| エルサルバドル | 単独館 | 合同館 | 単独館 | 不参加 |
| ガイアナ | 合同館カ | 不参加 | 単独館 | 合同館B |
| キューバ | 単独館 | 合同館 | 単独館 | 合同館D |
| グアテマラ | 単独館 | 合同館 | 単独館 | 合同館C |
| グレナダ | 合同館カ | 合同館 | 単独館 | 合同館A |
| コスタリカ | 単独館 | 不参加 | 単独館 | 不参加 |
| コロンビア | 単独館 | 単独館 | 単独館 | 単独館A type |
| ジャマイカ | 不参加 | 不参加 | 単独館 | 合同館B |
| スリナム | 合同館カ | 不参加 | 単独館 | 合同館A |
| セントビンセント&G | 合同館カ | 不参加 | 単独館 | 合同館B |
| セントクリストファー・N | 合同館カ | 不参加 | 単独館 | 合同館A |
| セントルシア | 合同館カ | 不参加 | 単独館 | 合同館A |
| チリ | 単独館 | 単独館 | 単独館 | 単独館 Xtype |
| ドミニカ国 | 合同館カ | 合同館 | 単独館 | 不参加 |
| ドミニカ共和国 | 合同館 | 合同館 | 単独館 | 合同館B |
| トリニダード・トバゴ | 合同館カ | 不参加 | 単独館 | 合同館A |
| ニカラグア | 単独館 | 不参加 | 単独館 | 不参加 |
| ハイチ | 合同館カ | 合同館 | 単独館 | 合同館B |
| パナマ | 単独館 | 不参加 | 単独館 | 合同館C |
| バハマ | 合同館カ | 不参加 | 単独館 | 不参加 |
| パラグアイ | 合同館 | 不参加 | 単独館 | 合同館B |
| バルバドス | 合同館カ | 不参加 | 単独館 | 合同館A |
| ブラジル | 単独館 | 単独館 | 単独館 | 単独館A type |
| ベネズエラ | 単独館 | 合同館 | 単独館 | 不参加 |
| ベリーズ | 不参加 | 不参加 | 単独館 | 合同館D |
| ペルー | 単独館 | 不参加 | 単独館 | 単独館X type |
| ボリビア | 合同館 | 合同館 | 単独館 | 合同館A |
| ホンジュラス | 合同館 | 不参加 | 単独館 | 合同館D |
| メキシコ | 単独館 | 単独館 | 単独館 | 不参加 |
| 合計LAC参加国数 | 31ヶ国 | 14ヶ国 | 32ヶ国 | 24ヶ国 |
| 公式参加国・地域総数 | 190ヶ国 | 145ヶ国 | 192ヶ国 | 158ヶ国 |
| 面積 | 528H | 110H | 483H | 155H |
| 入場者数 | 7308万人 | 2150万人 | 2410万人 | 2820万人予測 |
| 万博テーマ | より良い都市、より良い生活 | 地球に食料を、生命にエネルギーを
|
心をつなぎ、未来を創る | 命輝く未来社会のデザイン |
注:*上海万博の合同館カはカリブ海諸国の合同館、単に合同館は中南米合同館を意味する *大阪関西万博の単独館A typeは本来の単独館で、X typeは、協会が与えるスペースで単独館の体裁を整えたパビリオン 合同館のA~Dは、各国が入居したコモンズAからDを意味する。
過去に執筆した万国博覧会関係記事リスト
連載レポート1:桜井悌司「万国博覧会とラテンアメリカ」2018年12月
https://latin-america.jp/archives/33441
「万国博覧会とブラジル」 2015年1月
https://nipo-brasil.org/archives/8730