連載レポート１５４：桜井悌司「QSラテンアメリカの大学ランキング 2026」
連載レポート １５４
QSラテンアメリカの大学ランキング 2026
執筆者：桜井悌司（ラテンアメリカ協会顧問）
2025年10月1日にロンドンに本拠を置き、世界の高等教育分野における詳細なデータ、専門知識、ソリューションを提供するQS社（クアクアレリ・シモンズ）が恒例のQSラテンアメリカ・カリブ海諸国の大学ランキング2026（QS World University Rankings: Latin America & The Caribbean 2026）を公表した。（https://www.topuniversities.com/latin-america-caribbean-overall）
審査に当たっては、下記の５ポイントが対象となっている。1位の大学を100とし以下審査ポイントに応じスコアが減少するという方式をとっている。
- 研究と発見（論文ごとの引用数、教員1人あたりの論文数、学術的評価）Research ＆ Discovery (Citations per Paper, Papers per Faculty, Academic Reputation)
- 学習体験（教員と学生の比率、博士号取得教員の割合）Learning Experience (Faculty Student Ratio, Staff with PhD)
- 国際交流（国際的な研究ネットワーク）Global Engagement (International Research Network)
- 雇用可能性（雇用者からの評価）Employabilt (Employer Reputation)
- 詳細情報（国際学費、奨学金、学生構成、英語試験、学力試験）More Info. (international Fees, Scolarship, Student Mix, English Tests, Academic Tests)
今回の調査では、このラテンアメリカ・カリブ海地域26カ国の491大学を対象としている。491大学の内、多数を占めるベスト5の国は、ブラジル、130大学、コロンビア、メキシコ、67大学、アルゼンチン、45大学、チリ、41大学となっている。表１は、今回の調査の1位から101までの大学のリストであるが、ベスト10で昨年と変更があるのは、1位と2位が入れ替わり、チリ・カトリック大学が1位、サンパウロ大学が2位になったこと、ブラジルのUNESP（サンパウロ州立大学）が8位から6位に上り、コロンビアのロス・アンデス大学が7位から8位に下がったことである。
101位までにランクされている大学で見ると、ブラジルが27大学、チリ、16大学、メキシコ、14大学、アルゼンチン、12大学、コロンビア11大学、ペルー、ベネズエラ、ウルグアイ、エクアドルが各4大学、コスタリカ、3大学、プエルトリコ、キューバが各１大学となっている。人口規模をみると、ブラジル、約2億1200万人、メキシコ約1億2601万人、コロンビア、約5209万人、アルゼンチン、約4554万人、チリ、約1976万人を数えるので、チリの大学の優秀性が群を抜いていることが理解できる。
主催者側のQS社の主要なコメントは下記の通り。
＊この地域の市場動向は、中産階級の増加により、キャリア志向の学位や資格を求める学生数や人口構成にいくつかの変化が見られる。また、米国と地理的に近いことビザの制限が少ないことによって、世界的な学生の流れの変化もあり、これまでになく多くの国際学生がこの地域に引き寄せられている。
＊ブラジルは今年、130の大学がランク付けされているが、今回、新規ランクイン大学が34校に上った。また上位10校には3校入った。ブラジルの成長戦略を考える上で、ブラジル国内での大学院教育向けCAPES（高度人材育成協力）グローバルファンドの立ち上げによって、2026年から2031年まで、様々な国際的イニシアティブのグローバルパートナーとしてブラジルが参画することになっている。
＊チリは、41の大学がランクインしており、トップ10のうち2校が入っている。ラ・フロンテラ大学（Universidad de La Frontera）は国内で最も大きくランクを上げた大学で、11位上昇して全体で53位にランクインした。チリの大学は年々着実にランキングを上げており、MITやUCバークレーなど世界的に有名な機関との国際的な協力関係を最も重視している国の一つである。また、近年では英語で授業を行うプログラムも増えている。
＊メキシコは、67大学がランク付けされている。そのうち、モンテレイ工科大学（ITM）とメキシコ国立自治大学（UNAM）2つの大学がトップ10入りしている。
＊アルゼンチンは、域内で主要な目的地のひとつであり、44の大学がランクインしている。ブエノスアイレス大学がトップ10の地位を維持している。また、マル・デル・プラタ国立大学は最も大きく順位を上げ、15位上昇して110位タイとなった。国内外の学生に対する授業料無料の方針は、限られた予算の学生にとって人気の選択肢となり、留学生よりも外国からの学生を多く受け入れる結果となったが、この方針は現在、見直されている。
＊コロンビアは、67の大学がランクインしている。トップ10に入った大学は、8位のロス・アンデス大学である。コロンビアの大学は順位の変動も大きく、メデジン大学は8位上昇して140位にランクインした。
＊エクアドルはポジティブな変化を示している。新たに3校がランク入りし、26校中18校（69%）の大学の順位が上昇した。
＊ベリーズとトリニダード・トバゴが初登場。カリブ海地域ではプエルトリコ大学が最高 で38位を占めている。
表１ ラテンアメリカ・カリブ海諸国の大学ランキング（1位から101まで）
なお2025年10月9日には、イギリスの教育誌「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」（Times Higher Education, 略：THE）による世界大学ランキングが発表され、日本のマスコミにも取り上げられたので、ご関心のある向きは、参照いただきたい。
ラテンアメリカ協会のホームページの投稿欄で過去に筆者が執筆したラテンアメリカの大学ランキングについては、下記のようなものがある。適宜ご活用ください。
「大学ランキング２０２２年度版から読み取れるラテンアメリカの高等教育の特性」
当協会のラテンアメリカ研究所資料一般公開 2022年8月
連載レポート１１７ Latin American University Rankings 2023”に見るラテンアメリカの大学の動向 2023年8月https://latin-america.jp/archives/59045
連載レポート１４１：「世界大学ランキング2025にみるラテンアメリカ」2024年11月https://latin-america.jp/archives/64328
連載レポート １５０：CWUR版「世界大学ランキング2025」にみるラテンアメリカの大学2025年5月https://latin-america.jp/archives/66313
以 上