ラテンアメリカ・カリブ研究所レポート ILAC2025-4 2025 年6月「トランプ2.0の「ディール外交」に振り回される ラテンアメリカ(下): 合理性を欠く相互関税には泰然たる姿勢で 」桑山幹夫
【要旨】
本レポートは、トランプ大統領が選挙戦で打ち出し た「 アメリカ第一主義の貿易政策」がLAC諸国に及ぼす影響についての論考である。
トランプ2.0が4月2日に発表し、9日に発動させた 「 相互関税」の交渉期限が残り1か月となった。関税の一部を90日間停止し、その間に各国との関税交渉を早期にまとめたいトランプ2.0だが、その成果は英国との大筋合意を除けば皆無に近い。米国内でも相互関税を違法とする司法判断が出ており、訴訟が長期化する可能性もある。
4月2日発表の相互関税国リストにはキューバを除くLAC32か国が含まれる。第II節で、4月2日発表の相互関税、5月8日発表の英国との合意、5月12日発表の中国との関税一時引き下げ合意を整理し、これらの前例から読み取れるトランプ関税の方向性をLACの観点から模索する。
第III節では、米国とLAC(33か国)との貿易収支を財(モノ)貿易およびサービス貿易に分けて精査し、黒字収支を計上するメキシコを除く大半のLAC諸国 ( 25か国)に対して10%の基本関税を課すという、非合理で根拠に乏しいトランプ関税の矛盾を指摘する。LAC諸国の貿易相手国としての米国の重要性を中国と対比して考察し、LAC 諸国の中国市場などへの輸出転換の機会を把握分析する。
第IV節では、米国の依存が高いメキシコや中米諸国(特に、CAFTA―DR)、カリブ諸国、世界で複雑なFTA網を構築し貿易多様化を図ってきたチリとペルー、などにトランプ関税が及ぼす影響について産業別に考察する。農産物、医療機器、衣類品などの特定分野で高関税が課せられるアジア諸国とは対照的に、今後の交渉次第で価格競争力が高まる可能性もある。
第V節は、USMCAに焦点を当てる。最後にトランプ関税の方向性、LACからみたトランプ関税の展望に言及して本レポートの結びとする。
ファイル名(File Name) | ILAC2025_4.pdf |
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ファイル容量(File Capacity) | 1 MB |
バージョン(Version) | 1 |
作成日(Published) | 2025年6月9日 |
ダウンロード回数(Downloaded Numbers) | 21 回 |
カテゴリ(Category) | ラテンアメリカ・カリブ研究所レポート |