ラテンアメリカ・カリブ研究所レポート ILAC 2025-7 2025 年 9 月 「第2次トランプ政権下で激化する中国とのラテンアメリカにおける 覇権争い:地政学的観点から」 桑山幹夫
【要旨】
近年、ラテンアメリカ・カリブ(LAC)諸国の米国疎遠化と中国接近の動きが加速している。本レポートは、中国の過去 25 年にわたる対 LAC 外交の変遷、米国の対 LAC 外交との比較、西半球おけるトランプ 2.0 との覇権争いなど、地政学的観点の分析による論考である。
中国は、これまで通商関係の強化と巨額のインフラ資金の供与に国家主権の尊重および不干渉主義をかみ合わせた独自の「パートナーシップ外交」を展開してきた。だが、時が経つにつれ、経済優先の従来のアプローチから、政治、技術、エコロジー、文化、サイバーセキュリティ、国際犯罪などの側面を統合した安全保障をも含む、包括的で多次元のパートナーシップへの転換がみられる。
一方で、トランプ 2.0 は、差別関税の賦課、非正規移民対策の強化、公式援助の削減などを軸足とする強硬策を進めて LAC での中国との覇権争いに立ち向かう姿勢だ。
第 I 節では、「グローバル開発イニシアティブ」、「グローバル安全保障イニシアティブ」、「世界文明イニシアティブ」など、中国が近年に世界で展開するグローバル・サウス外交を司る3大ビジョンと、「包括的戦略的パートナーシップ」、「一帯一路構想」、「中国・ラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC)フォーラム」、との関連性をLACの視点から分析する。官民学共同体との連携にも言及する。
第 III 節では、米中の対LAC 外交で相違点が鮮明となった 2025 年 5 月の中国・CELAC 第 4 回閣僚会議と 「2025~27 年共同行動計画」および、同計画書で提示される 「連帯」、「発展」、「文明」、「平和」「人と人とのつながり」の 5 領域について整理し、LAC 諸国にとっての同会議の意義について総括する。同閣僚会議に首脳が参加したブラジル、コロンビア、チリからの提案についても触れておく。第 IV 節では、米国の対 LAC 外交について簡単に考察し、中国との相違点を指摘する。第 V 節は、中国の対 LAC 外交の展望に言及して本レポートの結びとする。
キーワード:中南米、中国、トランプ、一帯一路構想、ラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC)
| ファイル名(File Name) | ILAC2025_7.pdf |
|---|---|
| ファイル容量(File Capacity) | 917 KB |
| バージョン(Version) | 1 |
| 作成日(Published) | 2025年9月8日 |
| ダウンロード回数(Downloaded Numbers) | 167 回 |
| カテゴリ(Category) | ラテンアメリカ・カリブ研究所レポート |
