執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会顧問)
2025年9月13日より21日まで、代々木の国立競技場で「東京2025世界陸上」が開催された。今回の大会は、前売り券の販売も好調でTBSのテレビ放送を見ていても競技場は、ほぼ満席で大いに盛り上がった大会であった。期待に反して日本人選手の活躍は,銅メダル2個とにとどまったが、陸上競技の魅力について多くの日本人が実感した競技大会であった。
筆者も、1992年スペインのセビリャの小規模のスタジアムで開催された国際陸上大会で、100mのカール・ルイス、ベン・ジョンソン、棒高跳びのセルゲイ・ブブカの競技を身近に見たことがあるが、その迫力たるや物凄いものであった。
金銀銅のメダルの獲得ランキングは、表1の通りであるが、いくつかのコメントを下記に紹介する。
「全般的コメント」
「ラテンアメリカ・カリブ海諸国の活躍についてのコメント」
*何と言っても陸上の華である男子100mで堂々金メダルに輝いたジャマイカのオブリク・セビル選手を挙げることができる。かのウサイン・ボルトも勝利を確信していた。この種目の銀メダルも同じくジャマイカのキ゚シェーン・トンプソンであった。
*女子三段跳びで、この地域の選手が金銀銅を独占したのは大なるサプライズであった。金メダルはキューバのレジャニス・ペレス・エルナンデス、銀メダルはドミニカ国のシーア・ラフォンド、銅メダルはベネズエラのユリマル・ロハスであった。
*男子競歩ではブラジルのカイオ.ボンフィンが20m競歩で金、35km競歩で銀メダルと2つのメダルを勝ち取った。
*やり投げでは、男女ともに大健闘であった。トリニダード・トバゴのケショーン・ウォルコットが男子部門で金メダル、グレナダのアンダーソン・ピータースが銀メダルであった。 女子部門では日本の北口選手がまさかの予選落ち終わったが、三つ巴の激戦の末、エクアドルのユレイシー・アングロが優勝に輝いた。
*興味あることは、カリブ海の小国であるドミニカ国(人口6.6万人)からは三段跳びで銀メダルのシーア・ラフォンド選手、グレナダ(人口11.7万人)からは、男子やり投げで銀メダルのアンダーソン・ピータース選手、セントルシア(18.3万人)からは、女子100mで銅メダルを獲得したジュリアン・アルフレッド選手が活躍したことである。
南米の小国ウルグアイ(人口339万人)のジュ―リア・パテルナイン選手が女子マラソンで銅メダルを獲得したのも驚きであった。
*「女子4×100mリレー」と「女子4×400mリレー」ではジャマイカが米国に次ぐ2位であった。「男子4×100mリレー」ではメダルが期待されたが、バトンミスで決勝に進めなかった。
表1 東京2025世界陸上における国別メダル獲得ランキング
| 順位 | 国 名 | 金 | 銀 | 銅 | 合計 |
| 1位 | 米国 | 16(12) | 5(8) | 5(9) | 26(29) |
| 2位 | ケニア | 7(3) | 2(3) | 2(4) | 11(10) |
| 3位 | カナダ | 3(4) | 1(2) | 1(0) | 5(6) |
| 4位 | オランダ | 2(2) | 2(1) | 2(2) | 6(5) |
| 5位 | スペイン | 2(4) | 0(1) | 1(0) | 3(5) |
| 5位 | ニュージーランド | 2(0) | 0(0) | 1(0) | 3(0) |
| 5位 | ボツワナ | 2(0) | 0(1) | 1(1) | 3(2) |
| 5位 | スウエーデン | 2(2) | 0(1) | 1(0) | 3(3) |
| 9位 | ポルトガル | 2(0) | 0(0) | 0(0) | 2(0) |
| 10位 | ジャマイカ | 1(3) | 6(5) | 3(4) | 10(12) |
| 11位 | イタリア | 1(1) | 3(2) | 3(1) | 5(4) |
| 12位 | ドイツ | 1(0) | 3(0) | 1(0) | 5(0) |
| 13位 | ブラジル | 1(0) | 2(0) | 0(1) | 3(1) |
| 14位 | トリニダード・トバゴ | 1(0) | 1(0) | 0(0) | 2(0) |
| 16位 | キューバ | 1(0) | 0(1) | 2(2) | 3(3) |
| 17位 | エクアドル | 1(0) | 0(1) | 1(0) | 2(1) |
| 24位 | メキシコ | 0(0) | 2(0) | 0(0) | 2(0) |
| 27位 | ドミニカ国 | 0(0) | 1(0) | 0(0) | 1(0) |
| 27位 | ドミニカ共和国 | 0(1) | 1(0) | 0(0) | 1(1) |
| 27位 | グレナダ | 0(0) | 1(0) | 0(1) | 1(1) |
| 27位 | プエルトリコ | 0(0) | 1(1) | 0(0) | 1(1) |
| 41位 | コロンビア | 0(0) | 0(1) | 1(0) | 1(1) |
| 41位 | ウルグアイ | 0(0) | 0(0) | 1(0) | 1(0) |
| 41位 | セント・ルシア | 0(0) | 0(0) | 1(0) | 1(0) |
| 41位 | ベネズエラ | 0(1) | 0(0) | 1(0) | 1(1) |
| 40位 | 日本 | 0(1) | 0(0) | 2(1) | 2(2) |
| 27位 | 韓国 | 0(0) | 1(0) | 0(0) | 1(1) |
| 22位 | 中国 | 0(0) | 2(0) | 2(2) | 4(2) |
| メダル数 | 49(50) | 49(48) | 50(50) | 149(148) |
「注」( )内の数字は、2023ブダペスト世界陸上の成績を表わす。
ラテンアメリカ・カリブ海諸国のメダリスト・リスト
「短距離・中距離・長距離・リレー」
「男子100m」
金メダル オブリク・セビル ジャマイカ 9.77秒
銀メダル キ゚シェーン・トンプソン ジャマイカ 9.82秒
「男子200m」
銅メダル ブライアン・レベル ジャマイカ 19.64秒
「男子400m」
銀メダル ジェームズ・リチャーズ トリニダード・トバゴ 43.72秒
「女子100m」
銀メダル ティナ・クレイトン ジャマイカ 10.76秒
銅メダル ジュリアン・アルフレッド セントルシア 10.81秒
「女子200m」
銅メダル シェリカ・ジャクソン ジャマイカ 22.18秒
「女子400m」
銀メダル マリレデイ・.パウリノ ドミニカ共和国 47.98秒
「女子4×100mリレー」
銀メダル ジャマイカ 41.79秒 金は米国、銅はドイツ
(Shelly-Ann Fraser-Pryce Tia Clayton Tina Clayton Jenielle Smith)
「女子4×400mリレー」
銀メダル ジャマイカ 3分19.25秒 金は米国、銅はオランダ
(Dejanea Aakley Stacey Ann Williams Andrenette Knight Nickisha Pryce)
「ハードル・障害」
「男子110mハードル」
銀メダル オーランド・ベンネット ジャマイカ 13.08秒
銅メダル タイラー・メイソン ジャマイカ 13.12秒
「男子400mハードル」
銀メダル アリソン・ドス・サントス ブラジル 46.84秒
「マラソン・競歩」
「男子20km競歩」
金メダル カイオ.ボンフィン ブラジル 1時間18分35秒
「男子35km競歩」
銀メダル カイオ・ボンフィン ブラジル 2時間28分16秒
「女子20km競歩」
銀メダル アレグナ・ゴンサレス メキシコ 1時間26分06秒
「女子35km競歩」
銅メダル パウラ・ミレーナ・トーレス エクアドル 2時間42分44秒
「女子マラソン」
銅メダル ジュ―リア・パテルナイン ウルグアイ 2時間27分23秒
「跳躍」
「男子走り幅跳び」
銀メダル タジェイ・ゲイル ジャマイカ 8.34m,-0.1
「男子三段跳び」
銅メダル ラサロ・マルティネス キューバ 17.49m,+0.0
「女子走り幅跳び」
銅メダル ナタリア・リナレス コロンビア 6.92m,+0.5
「女子三段跳び」
金メダル レジャニス・ペレス・エルナンデス キューバ 14.94m,-0.3
銀メダル シーア・ラフォンド ドミニカ国 14.89m,+1.0
銅メダル ユリマル・ロハス ベネズエラ 14.76m,+0.3
「投てき」
「男子砲丸投げ」
銀メダル ウジェール・ムニョス メキシコ 21.97m
「男子やり投げ」
金メダル ケショーン・ウォルコット トリニダード・トバゴ 88.16m
銀メダル アンダーソン・ピータース グレナダ 87.38m
「女子円盤投げ」
銅メダル シリンダ・モラレス キューバ 67.25m
「女子やり投げ」
金メダル ユレイシー・アングロ エクアドル 65.12m
「混成(十種、七種)
銀メダル OWENS-DELERME Ayden プエルトリコ 8784点
追加情報;スペインとポルトガルのメダリストたち
「スペイン」
女子20km競歩 金メダル マリア・ぺレス 1時間25分54秒
女子35km競歩 金メダル マリア・ぺレス 2時間39分01秒
男子20km競歩 銅メダル パウロ・マクグラス 1時間18分45秒
「ポルトガル」
男子1500m 金メダル イサク・ナデル 3分34,10秒
男子三段跳び 金メダル ペドロ.ピサルト 17.91m +0.5
なお名前の表示は、大会ホームページやTBS等の表示に従った。
過去に執筆した関連レポートは下記の通り。
「オリンピック・ゴールド・メダリスト」 2021年7月
https://latin-america.jp/archives/49001
「東京オリンピック2020とラテンアメリカ・カリブ諸国のメダル獲得状況」2021年
https://latin-america.jp/archives/49661
「2024年パリ・オリンピックでのラテンアメリカ・カリブ海諸国による金銀銅メダルの獲得状況」 2024年9月
https://latin-america.jp/archives/63562
以 上