ボゴタを拠点にノンフィクション物を書いている著者は、これまで『ダリエン地峡決死行』(2019年 https://latin-america.jp/archives/40707 )など、いずれもあまり普通には行き難いラテンアメリカの各所を取り上げた紀行記を書いている。本書は「ゲバラの原風景に触れてみたい」と、ゲバラの生涯にわたった革命家としての生き方の原点となったバイクで出発した南米縦断旅行と同じルートを辿る旅に出たはずだが、出発後はあまりゲバラが受けたその後の革命家の生き様に繋がった感性を深堀りする部分は少なく、なぜか南米で広く知られているマッチングアプリを使ってその土地ごとに女性とのデートの約束取り付けとその顛末を列記していて、ゲバラの青春の旅と著者の婚活の結び付けの意図は分からない。
〔桜井 敏浩〕
(産業編集センター 2023年3月 214頁 1,200円+税 ISBN978-4-86311-357-2 )
<紹介者注>
ちなみに、日本でも多くの人たちに感銘を与えたゲバラのアルゼンチンを発って中古バイクとヒッチハイクで南米を北上し、最後はグアテマラを経てメキシコに到達してフィデル・カストロとの出会いに至るまでは、チェ・ゲバラ自身による『モーターサイクル南米旅行日記 (増補新版)』(現代企画室2004年)、その映画化『モーターサイクル・ダイアリーズ』(英・米合作、2004年製作。日本でも公開、日本ヘラルド映画配給)、ゲバラの革命に目覚めた南米旅行、キューバでの奮闘、そしてボリビアに死すまでの生涯を解説した『チェ・ゲバラ―旅、キューバ革命、ボリビア』(伊高浩昭 中公新書 2015年 https://latin-america.jp/archives/16474)、この旅行を題材とした『ポーラースター -ゲバラ覚醒』(海堂 尊 文藝春秋 2016年 https://latin-america.jp/archives/21985 )という面白い小説があり、またこのゲバラの若かりし頃の旅に興味をもってそのルートを辿ろうとした紀行記も出ている(『レボリューション』(須藤元気 講談社 2007年 https://latin-america.jp/archives/5604 など)。