執筆者:桜井悌司(ラテンアメリカ協会顧問)
1)はじめに
2026年2月10日に、恒例の「2025年世界腐敗認識指数」(https://images.transparencycdn.org/images/Report_CPI2025.pdf)が発表された。この調査は、ドイツに本部を置くNGOのトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が、世界の182ヶ国・地域(前回180ヶ国・地域)を対象に腐敗のランキングを公表するもので、1995年から始まったものである。腐敗認識指数は国際機関やシンクタンクのデータを基に腐敗度を100点満点で数値化したもので、高くなればなるほどクリーン度が高いことになる。対象国182か国のうち、122カ国が 50点を下回っており、10年ぶりに世界平均は42点(前回43点)と1点下落した。また80点以上獲得した国の数は、10年前の12カ国から今年はわずか5カ国に減少した。特に、米国(64)、カナダ(75)、ニュージーランド(81)から、英国(70)、フランス(66)、スウェーデン(80)などヨーロッパ各地に至るまで、民主主義国で汚職認識の悪化が見られるという懸念すべき傾向が出てきた。
表1は、同指数の世界のランキングとラテンアメリカ・カリブ諸国のランキングを表わしている。世界ランキングは、前年比ごく少しの変動があるが、今回の2025年調査では、デンマーク、フィンランド、シンガポール、ニュージーランド、ノルウエー、スウェーデン、スイス、ルクセンブルグ、オランダ、ドイツがベスト10に入っている。
日本は、全体の18位で得点は、71点(前回71点)であった。前年度調査では20位であったので2ポイント上昇したことになる。その他アジア諸国をみてみると、シンガポール(3位、84点)、香港(12位、76点)、ブータン(18位、73点)、台湾(24位、68点)、韓国(31位、63点)、マレーシア(54位、52点)、中国(76位、43点)、ベトナム(81位、41点)、インドネシア(109位、34点)、タイ(116位、34点)となっている。前年比、ランキングと得点の両方を上げた国は、香港、台湾、マレーシア、ベトナムである。
世界的に腐敗認識指数の低下傾向が見られるが、TIでは改善のために6つの勧告を提案している。
*独立性があり、透明でアクセス可能な司法制度を確保する
*腐敗によって被害を受けた人々に司法へのアクセスを提供する
*政治的意思決定への過度な影響を取り締まる
*市民空間の確保と反汚職報道を促進する
*公共サービスおよび公共財政管理における透明性と監視を強化する
*大規模な汚職や不正な資金の流れを防止・発見・処罰するためには、国内での強固なチェック機構とバランスに加え、強力な国内外の予防・発見手段が不可欠
表1 世界腐敗認識指数ランキング(2025年)
| 順位 | 世界 | 得点 | 順位 | LAC | 得点 |
| 1 | デンマーク | 89 | 1(17) | ウルグアイ | 73 |
| 2 | フィンランド | 88 | 2(24) | バルバドス | 68 |
| 3 | シンガポール | 84 | 3(29) | バハマ | 64 |
| 4 | ニュージーランド | 81 | 4(31) | チリ | 63 |
| 4 | ノルウエー | 81 | 4(31) | セント・ヴィンセントG | 63 |
| 6 | スエーデン | 80 | 6(37) | ドミニカ | 60 |
| 6 | スイス | 80 | 7(39) | セント・ルシア | 59 |
| 8 | ルクセンブルグ | 81 | 8(46) | コスタリカ | 56 |
| 8 | オランダ | 80 | 8(46) | グレナダ | 56 |
| 10 | ドイツ | 77 | 10(73) | ジャマイカ | 44 |
| 10 | アイスランド | 77 | 11(81) | トリニダードT | 41 |
| 12 | オーストラリア | 76 | 12(84) | キューバ | 40 |
| 12 | アイルランド | 76 | 12(84) | ガイアナ | 40 |
| 12 | エストニア | 76 | 14(96) | スリナム | 38 |
| 12 | 香港 | 76 | 15(99) | コロンビア | 37 |
| 16 | カナダ | 75 | 15(99) | ドミニカ共和国 | 37 |
| 17 | ウルグアイ | 73 | 17(104) | アルゼンチン | 36 |
| 18 | ブータン | 71 | 17(104) | ベリーズ | 36 |
| 18 | 日本 | 71 | 19(92) | ブラジル | 35 |
| 20 | 英国 | 70 | 20(116) | パナマ | 33 |
| 27 | フランス | 66 | 20(116) | エクアドル | 33 |
| 29 | 米国 | 64 | 22(120) | エルサルバドル | 32 |
| 52 | イタリア | 53 | 23(136) | ペルー | 30 |
| 24 | 台湾 | 68 | 24(127) | ボリビア | 28 |
| 31 | 韓国 | 63 | 25(141) | メキシコ | 27 |
| 49 | スペイン | 55 | 26(142) | グアテマラ | 26 |
| 76 | 中国 | 43 | 27(150) | パラグアイ | 24 |
| 81 | ベトナム | 41 | 28(157) | ホンジュラス | 22 |
| 109 | インドネシア | 34 | 29(169) | ハイチ | 16 |
| 116 | タイ | 33 | 30(175) | ニカラグア | 14 |
| 157 | ロシア | 22 | 31(180) | ベネズエラ | 10 |
注: ( )内は世界における順位を表す。
2)ラテンアメリカの動向
次にラテンアメリカにおける腐敗認識指数をみてみよう。表2は、「ラテンアメリカ諸国の腐敗度指数の過去5年(2021~2025)のランクと得点(100点満点)の推移」。表3は、「過去1年間(2024年~2025年)でランクと得点を上昇させた国、下落させた国」、表4は、「2021年と2025年の過去5年間でランクと得点を上昇させた国、下落させた国」である。
ラテンアメリカ・カリブ諸国(LAC諸国)の本調査対象国は、31カ国(ベリーズは本年対象国となった)とほとんどの地域の国をカバーしている。2025年調査によると、ベスト10の国は、ウルグアイ、バルバドス、バハマ、チリ、セント・ヴィンセントG、ドミニカ国、セント・ルシア、コスタリカ、グレナダ、ジャマイカとなっており、10ヶ国のうち7ヶ国がカリブ海諸国の人口小国である。一方ワースト10を挙げると、ベネズエラ、ニカラグア、ハイチ、ホンジュラス、パラグアイ、グアテマラ、メキシコ、ボリビア、ペルー、エルサルバドルとなっている。
2024年と2025年の過去1年間でみると、ランクを上昇させた国は9ヶ国で、とりわけ、エルサルバドル、セント・ルシア、ガイアナ、ドミニカ共和国、エクアドルが5ポイント以上上昇させた。反対にランクを下落させた国は、18ヶ国に及び、スリナム、コロンビア、アルゼンチン、ウルグアイ、コスタリカで4ポイント以上下落を見た。ブラジル等3ヶ国は変化なしであった。
もう少し長期で見てみよう。2021年から2025年の過去5年間で見ると、ランクを上げた国は11ヶ国で、下げた国は19ヶ国と、悪化した国が圧倒的に多い。ランクを上昇させた国の中で目覚ましいのは、ドミニカ共和国でランクで29ポイント、得点で6点も上昇させた。以下、セント・ルシア、ドミニカ国、グアテマラ、セント。ヴィンセントG、グレナダ、バルバドスも順位で5ポイント以上改善した。反対にランクを大幅に下げた国は、ペルー、パラグアイ、キューバで、順位で20ポイント以上、得点で6点の下落であった。以下、順位で10ポイント以上下げた国は、メキシコ、コロンビア、ブラジル、パナマ、エクアドル、ニカラグアの6ヶ国である。中南米の3台人口大国が軒並みにランクを下げたことが理解できる。
表2 ラテンアメリカ諸国の腐敗度指数の過去5年(2021~2025)のランクと得点(100点満点)の推移
| 国 名 | 世界順位
2025年 |
世界順位
2024年 |
世界順位
2023年 |
世界順位
2022年 |
世界順位
2021年 |
| ウルグアイ | 17/182
73点 |
13/180
76点 |
16/180
73点 |
14/180
74点 |
21/180
73点 |
| バルバドス | 24/182
68点 |
23/180
68点 |
24/180
69点 |
29/180
65点 |
29/180
65点 |
| バハマ | 29/182
64点 |
28/180
65点 |
30/180
64点 |
30/180
64点 |
30/180
64点 |
| チリ | 31/182
63点 |
32/180
63点 |
29/180
66点 |
27/180
67点 |
27/180
67点 |
| セント・ヴィンセントG | 31/182
63点 |
32/180
63点 |
36/180
60点 |
35/180
60点 |
38/180
59点 |
| ドミニカ国 | 37/182
60点 |
36/180
60点 |
42/180
56点 |
45/180
55点 |
45/180
55点 |
| セント・ルシァ | 39/182
59点 |
38/180
59点 |
45/180
55点 |
45/180
55点 |
43/180
56点 |
| コスタリカ | 46/182
56点 |
42/180
58点 |
45/180
55点 |
48/180
54点 |
39/180
58点 |
| グレナダ | 46/182
56点 |
46/180
56点 |
49/180
53点 |
51/180
52点 |
52/180
53点 |
| ジャマイカ | 73/182
44点 |
73/180
44点 |
69/180
44点 |
69/180
44点 |
70/180
44点 |
| トリニダード&T | 81/182
41点 |
82/180
41点 |
76/180
42点 |
77/180
42点 |
82/180
41点 |
| キューバ | 84/182
40点 |
82/180
41点 |
76/180
42点 |
65/180
45点 |
63/180
46点 |
| ガイアナ | 84/182
40点 |
92/180
39点 |
87/180
40点 |
85/180
40点 |
87/180
39点 |
| スリナム | 96/182
38点 |
88/180
40点 |
87/180
40点 |
85/180
40点 |
87/180
39点 |
| コロンビア | 99/182
37点 |
92/180
39点 |
87/180
40点 |
91/180
39点 |
87/180
39点 |
| ドミニカ共和国 | 99/182
37点 |
104/180
36点 |
108/180
35点 |
123/180
32点 |
128/180
31点 |
| アルゼンチン | 104/182
36点 |
99/180
37点 |
96/180
37点 |
94/180
38点 |
96/180
38点 |
| ブラジル | 107/182
35点 |
107/180
34点 |
104/180
36点 |
94/180
38点 |
96/180
38点 |
| パナマ | 116/182
33点 |
114/180
33点 |
108/180
35点 |
101/180
36点 |
105/180
36点 |
| エクアドル | 116/182
33点 |
121/180
32点 |
115/180
34点 |
101/180
36点 |
105/180
36点 |
| エルサルバドル | 120/182
32点 |
130/180
30点 |
126/180
31点 |
116/180
32点 |
115/180
34点 |
| ペルー | 130/182
30点 |
127/180
31点 |
121/180
33点 |
101/180
36点 |
105/180
36点 |
| ボリビア | 136/182
28点 |
133/180
28点 |
133/180
29点 |
126/180
31点 |
128/180
30点 |
| メキシコ | 141/182
27点 |
140/180
26点 |
126/180
31点 |
126/180
31点 |
124/180
31点 |
| グアテマラ | 142/182
26点 |
146/180
25点 |
154/180
23点 |
150/180
24点 |
150/180
25点 |
| パラグアイ | 150/182
24点 |
149/180
24点 |
138/180
28点 |
137/180
28点 |
128/180
30点 |
| ホンジュラス | 157/182
22点 |
154/180
22点 |
154/180
23点 |
157/180
22点 |
167/180
23点 |
| ハイチ | 169/182
16点 |
168/180
16点 |
172/180
17点 |
171/180
17点 |
164/180
20点 |
| ニカラグア | 175/182
14点 |
172/180
14点 |
172/180
17点 |
167/180
19点 |
164/180
20点 |
| ベネズエラ | 180/182
10点 |
178/180
10点 |
178/180
13点 |
177/180
14点 |
177/180
14点 |
表3 過去1年間(2024年~2025年)でランクと得点を上昇させた国、下落させた国
| ランクを上げた国 9ヶ国 | ランクを下げた国 18ヶ国 | 変化なし3ヶ国 |
| エルサルバドル(+10/+2)、セントルシア(+9/0)、ガイアナ(+8/-1)、ドミニカ共和国(+5/+1)、エクアドル(+5/+1)、グアテマラ(+4/+1)、チリ(+1/0)、トリニダードT(+1/0)、セント・ヴィンセントG(+1/0) | スリナム(-8/-2)、コロンビア(-7/-2)、アルゼンチン(-5/-1)、ウルグアイ(-4/-3)、コスタリカ(-4/-2)、ペルー(-3/-1)、ボリビア(-3/0)、ホンジュラス(-3/0)、ニカラグア(-3/0)、キューバ(-2/-1)、パナマ(-2/0)、ベネズエラ(-2/0)、メキシコ(-1/+1)、パラグアイ(-1/0)、バルバドス(-1/0)、ハイチ(-1/0)、バハマ(-1/-1)、ドミニカ(-1/0) | グレナダ(0/0),ブラジル(0/+1)、ジャマイカ(0/0) |
注)( )内の最初の数字は、順位の上昇を表し、+はランクの上昇、-はランクを下落をあらわす。/の後の数字は得点の上下をあらわす。0は変化なし。
表4 2021年と2025年の過去5年間でランクと得点を上昇させた国、下落させた国
| ランクを上げた国 11ヶ国 | ランクを下げた国 19ヶ国 |
| ドミニカ共和国(+29/+6)、セント・ルシア(+14/+3)、ドミニカ国(+8/+5)、グアテマラ(+8/+1)、セント・ヴィンセントG(+7/+4)、グレナダ(+6/+3)、バルバドス(+5/+3)、ウルグアイ(+4/0)、ガイアナ(+3/+1)、バハマ(+1/0)、トリニダードT(+1/0) | ペルー(-25/-6)、パラグアイ(-22/-6)、キューバ(-21/-6)、メキシコ(-17/-4)、コロンビア(-12/-2)、ブラジル(-11/-3)、パナマ(-11/-3)、エクアドル(-11/-3)、ニカラグア(-11/-6)、スリナム(-9/-1)、アルゼンチン(-8/-2)、ボリビア(-8/-2)、ホンジュラス(-8/-1)、コスタリカ(-7/-2)、エルサルバドル(-5/-2)、ハイチ(-5/-4)、チリ(-4/-4)、ジャマイカ(-3/0)、ベネズエラ(-3/-4) |
注)( )内の最初の数字は、順位の上昇を表し、+はランクの上昇、-はランクを下落をあらわす。/の後の数字は得点の上下をあらわす。
過去に執筆した腐敗認識指数調査レポートは、下記の通り。
2020年2月「統計にみるラテンアメリカその2」
https://latin-america.jp/archives/41783
2022年3月 「世界腐敗認識指数2021年版」
https://latin-america.jp/archives/52135
2022年10月 「世界ランキング最新7調査に観るラテンアメリカ」
https://latin-america.jp/archives/54984
2023年3月「2023年世界腐敗認識指数について」
https://latin-america.jp/archives/57036
2024年2月「2023年世界腐敗認識指数ランキングとラテンアメリカ」
https://latin-america.jp/archives/61580
2025年2月「2024年世界腐敗指数ランキングとラテンアメリカ」
https://latin-america.jp/archives/65284